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【ディニの定理】各点収束から一様収束が従う定理とその証明

微分積分学(大学)集合と位相
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関数列の収束について,一様収束すれば各点収束することが従います。一方で,一般的に逆は成り立たず,一様収束は各点収束よりもかなり強い収束として知られています。
しかし,各点収束にある条件を加えると,一様収束が言える「ディニの定理 (Dini’s theorem) 」と呼ばれる定理があります。これを紹介しましょう。

ディニの定理の主張

定理(ディニ; Dini)

[0,1] 上で定義された連続関数の列 \{f_n\} f_n(x) \le f_{n+1}(x), \,(x\in [0,1], n\ge1) をみたし,かつ連続関数 f に各点収束するとき,この収束は一様収束である。

ここでポイントなのは次の3点です。

Point
  • 関数列 \{f_n\}連続関数であること
    f_n(x)= \begin{cases}-1 & 0<x<1/n,\\ 0 & x=0, x\ge 1/n\end{cases} とすると, f(x)=0 に各点収束しますが,一様収束ではありません。
  • f_n(x)\le f_{n+1}(x) をみたすこと
    → 以下のような f_n だと, f(x)=0 に各点収束しますが,一様収束ではありません。
  • 各点収束先は連続関数であること
    → たとえば, f_n(x)=-x^n [0,1] 上で f(x)=\begin{cases} 0 & 0\le x<1 ,\\-1 & x=1\end{cases} に収束しますが, f は連続関数でなく,一様収束にはなりません。

また今回は関数の定義域を [0,1] としましたが,本定理は,コンパクトハウスドルフ空間上の実連続関数でも成立します。

ディニの定理の証明

証明の理解には,位相空間論の知識が必要です。

証明

\varepsilon > 0 とし,
A_n = \{ x \in [0,1] \mid f(x) - f_n(x) < \varepsilon \}
と定める。 A_n は開集合で, A_n \subset A_{n+1} \,(n\ge1), \bigcup_{n=1}^\infty A_n = [0,1] をみたすので, \{A_n\} は開被覆となる。
よって, [0,1] のコンパクト性より,有限部分被覆が存在する。 A_n の包含関係より,これは,ある N が存在して, A_N = [0,1] となることを意味する。すなわち, n \ge N に対して,
| f(x) - f_n(x) | < \varepsilon \quad (x \in [0,1])
が成立するので,一様収束が言えた。

証明終

位相空間の知識がない場合,証明は難しいですが,定理の内容だけでも理解していただければ幸いです。

類似の定理

各点収束から一様収束が従う定理としては,以下も知られています。参照してみてください。

参考文献

  1. 内田伏一「集合と位相」(裳華房 数学シリーズ, 増補新装版, 2020)