除外点位相とは,ある特定の点 p を含まない部分集合全体を開集合系にするような位相空間で, T_0,T_4, T_5 分離公理をみたすが, T_1,T_2, T_3 をみたさない特殊な空間です。
除外点位相の定義と性質を掘り下げましょう。
除外点位相の定義

定義(除外点位相)
X を空でない集合とし, p\in X とする。
\Large \color{red}\mathcal{O}_{\neg p} =\{X\}\cup \{ O\subset X\mid p\notin O\}
を, p を含まない部分集合全体の集合(と全体集合の和集合)とすると,(X,\mathcal{O}_{\neg p}) は位相空間となる。この位相を除外点位相 (excluded point topology) という。
除外点位相の性質
可算性・分離性・コンパクト性・連結性に分けて性質を解説しますが,最初に紹介するもの全てまとめておきます。
X の濃度 | 2点 (シェルピンスキー空間) | 3点以上の有限集合 可算集合 | 非可算集合 |
---|---|---|---|
第一可算 | 〇 | 〇 | 〇 |
第二可算 | 〇 | 〇 | × |
可分 | 〇 | 〇 | × |
T_0 空間 | 〇 | 〇 | 〇 |
T_1, T_2, T_3 空間 | × | × | × |
T_4, T_5 空間 | 〇 | 〇 | 〇 |
コンパクト | 〇 | 〇 | 〇 |
点列コンパクト | 〇 | 〇 | 〇 |
連結 | 〇 | 〇 | 〇 |
弧状連結 | 〇 | 〇 | 〇 |
弧連結 | × | × | × |
hyperconnected | 〇 | × | × |
ultraconnected | 〇 | 〇 | 〇 |
順番に考えます。
1. 除外点位相と可算公理
定理1(除外点位相と可算公理)
(X,\mathcal{O}_{\neg p}) を除外点位相が入った位相空間とする。このとき,
定理1の証明
1.について,各点 x\in X\setminus\{p\} に対し, \mathcal{B}_x=\bigl\{\{x\}\bigr\} は x の基本近傍系である。また, \mathcal{B}_p=\{X\} は p の基本近傍系である。よって, X は第一可算である。
2.について,
\mathcal{B}= \{X\}\cup \bigl\{ \{x\}\mid x\in X\setminus \{p\} \bigr\}
とすると,これは (X,\mathcal{O}_{\neg p}) の開基であり,逆にすべての開基は \mathcal{B} を含む。よって, X が高々可算なら第二可算であるし,非可算なら第二可算でない。
3.について, A\subset X に対し,
\overline{A} = \begin{cases} A & p\in A \\ A\cup \{p\} & p\notin A\end{cases}
であるから, X が高々可算のとき可分だし,非可算のときは可分でない。
証明終
2. 除外点位相と分離公理
定理2(除外点位相と分離公理)
(X,\mathcal{O}_{\neg p}) を除外点位相が入った位相空間とする。このとき,
- X は T_0 空間である。
- X は T_1,T_2,T_3 空間でない。
- X は T_4, T_5 空間である。
本記事では, T_0 から T_5 は以下のように定義しています。この定義は文献によって変わりますから,注意してください。
名称 | 定義 |
---|---|
T_0 コルモゴロフ空間 (Kolmogorov space) | 任意の異なる2点 x,y\in X に対して, x\in O_x,\, y\notin O_x となる開集合 O_x または x\notin O_y,\, y\in O_y となる開集合 O_y の少なくとも一方が取れる |
T_1 | 任意の異なる2点 x,y\in X に対して, x\in O_x,\, y\notin O_x となる開集合 O_x と x\notin O_y, \,y\in O_y となる開集合 O_y の両方が取れる |
T_2 ハウスドルフ空間 (Hausdorff space) | 任意の異なる2点 x,y\in X に対して, x\in O_x, \, y\in O_y,\, O_x\cap O_y=\emptyset となる開集合 O_x, O_y が取れる |
T_3 | 任意の閉集合 F と任意の点 x\in X\setminus F に対して, F\subset O_F,\, x\in O_x,\, O_F\cap O_x=\emptyset となる開集合 O_F, O_x が取れる |
T_4 | 任意の2つの互いに素な空でない閉集合 F,G\subset X に対して, F\subset O_F,\, G\subset O_G,\, O_F\cap O_G=\emptyset となる開集合 O_F, O_G が取れる |
T_5 | \overline{A}\cap B=A\cap \overline{B}=\emptyset をみたす任意の2つの空でない集合 A,B\subset X に対して, A\subset O_A,\, B\subset O_B,\, O_A\cap O_B=\emptyset となる開集合 O_A, O_B が取れる |
定理2の証明
1.について, x,y\in X を異なる2点とすると,少なくとも一方は p とは異なるので, x\ne p とする。このとき, \{x\} は, x は含むが y は含まない開集合なので, T_0 分離公理をみたす。
2.について, p を含む開集合は X しかないので, p を含むが, x\in X\setminus\{p\} を含まない開集合は存在しない。よって,T_1 空間でない。これより, T_2 空間でもない。また,空でない閉集合 F は p を必ず含むので, F を含む開集合は X しかない。したがって, T_3 空間でもない。
3.について示す。空でない閉集合は,必ず p を含むので,空でない2つの閉集合 F,G\subset X は取れない。よって, T_4 空間である(空虚な真)。
また,空でない A,B\subset X を, \overline{A}\cap B=\emptyset をみたすとする。\overline{A} は p を含むから, p\notin B である。また, A\cap \overline{B}=\emptyset もみたすとすると,同様に p\notin A となる。このとき, A, B 自身が互いに素な開集合である。ゆえに T_5 空間である。
証明終
3. 除外点位相とコンパクト性
定理3の証明
1.について, \{U_\lambda\}\subset \mathcal{O}_{\neg p} を X の開被覆とすると, p を含むある開集合 U_\lambda\in \mathcal{O}_{\neg p} が存在するが, p を含む開集合は X のみなので, U_\lambda =X でなければならない。よって, \{X\} は部分被覆となるので,コンパクトである。
2.について, \{x_n\}\subset X を任意の点列すると, p を含む開集合は X のみなので,この点列は p に収束する。ゆえに,点列コンパクトである。
証明終
4. 除外点位相と連結性
定理4(除外点位相と連結性)
(X,\mathcal{O}_{\neg p}) を除外点位相が入った位相空間とする。このとき,
- X は連結である。
- X は弧状連結である。
- X は弧連結でない。
- X は2点集合(シェルピンスキー空間)のとき,hyperconnected であり,3点以上の集合のときは hyperconnected でない。
- X は ultraconnected である。
まず定義を確認しておきましょう。
名称 | 定義 |
---|---|
連結 (connected) | 2つの互いに素な開集合 U,V で, U\cup V=X となっているものは存在しない |
弧状連結 (path connected) | 任意の異なる2点 x,y\in X について,ある連続写像 f\colon [0,1]\to X で, f(0)=x, f(1)=y となるものが存在する |
弧連結 (arc connected) | 上の f として,埋め込みすなわち f\colon [0,1]\to f([0,1]) が同相となっているものが常に取れる(※ 単に f として全単射なものが取れるとすることもある) |
hyperconnected | 任意の空でない2つの開集合が常に共通部分を持つ |
ultraconnected | 任意の空でない2つの閉集合が常に共通部分を持つ |
定理4の証明
1,2,5.について
任意の空でない閉集合は p を含むので,ultraconnected である。ultraconnected なら弧状連結だし,弧状連結なら連結なので,1,2,5.が示せた。
4.はほぼ明らかなので略。
3.について
f\colon [0,1]\to X を全単射かつ連続とする。 x\in f([0,1])\setminus \{p\} とすると, \{x\} は開集合なので, f^{-1}(\{x\})\subset [0,1] も開集合であるが, f は全単射なので1点集合でもある。これはあり得ない。ゆえに弧連結でない。
証明終
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除外点位相 (X,\mathcal{O}_{\neg p}) の閉集合族
\mathcal{F}=\{\emptyset\}\cup \{ F\subset X\mid p\in F\}
は, p を含む部分集合全体(と空集合)のことを指します。\mathcal{F} はまた開集合族の定義をみたしており,位相空間 (X,\mathcal{F}) を考えることができます。これを特定点位相 (particular point topology) といいます。除外点位相とは,異なった性質をもちます。以下で解説しています。
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