数学科の学生が論文をかく際, \LaTeX (ラテフ) という専用のソフトを使うことになるでしょう。
本サイトでも \LaTeX にまつわるノウハウは多数紹介していますが,腰を据えてきちんと勉強したい場合は,書籍「[改訂第9版]LaTeX美文書作成入門」(奥村晴彦,黒木裕介)をオススメします。本記事では,この書籍について紹介します。
[改訂第9版]LaTeX美文書作成入門の内容
第1版が発売されたのは1997年(実は前身となる書籍もある)であり,そこから3~4年周期で改訂して今に至っています(間違って古い版を買わないように注意)。昔から今まで,LaTeXの入門書籍と言えば一番に挙げられる書籍です。著者の奥村先生は三重大学の名誉教授で,jsarticle
クラスをはじめ,LaTeXのさまざまなクラスやマクロを開発されています。
[改訂第9版]LaTeX美文書作成入門の書評
良いところ
- 最新のLaTeXを正しくマスターできる(ネット上の記事は古い情報も多いので注意)
- 昔からある
pLaTeX
から最新のLuaLaTeX
まで学べる - LaTeX の勉強のみならず,文書の作法や数式組版規則まで体系的に学ぶことができる
- PDF版の電子書籍がある
良くないところ
- あくまで体系的・網羅的に学びたい人向けの本であり,最速で使いたいだけの人には遠回りである(→ 辞書的な使い方もアリ)
- path の概念など,パソコンにある程度詳しくないと,使い始めるまでのハードルが高い
pLaTeX, upLaTeX, LuaLaTeX
をはじめ,さまざまな LaTeX が混在して解説されているので,何が何だか分かりにくい- とにかく内容が多すぎて紙の本は重たい(→電子書籍がオススメ)
ただし,3つ目はLaTeX自体の問題であるため,仕方ないのかもしれません。LaTeXは昔からあり,かつ今も活発に開発されているが故に,さまざまなコンパイラ・ドキュメントクラス・パッケージが乱立している印象です。
この本がオススメなのはこんな人
- LaTeXをじっくり腰を据えて勉強したい。単に使えるようになるだけではなく,ちゃんと使いこなせるようになりたい
- LaTeXを少し使ったことはあるが,ちゃんとしたかき方を知らない・体系的に学習したい
- LaTeXで高度なことがしたい。将来的に自分でTeXを使ってマクロ・パッケージを書いてみたい
- LaTeXに関する辞書的な本を一つ持っておきたい
- LaTeXに限らず,パソコンを用いた美しい文書の作成方法を学びたい
少なくとも博士取得志望の数学科の学生は,LaTeXを本格的に使うことになるため,この本は必携です。
最速で使いたいだけの人にとっては遠回りになりますが,それでもやはりこの本はおすすめです。最速で学びたい人は第2, 3, 4, 5, 6章の必要そうな部分だけ読んで,あとで高度なことがやりたくなったらまた読むのが良いです。
最速で学びたい場合,個人的には upLaTeX
コンパイラを使い,jsarticle
クラスを用いて,最初に
\RequirePackage{plautopatch}
\documentclass[uplatex,dvipdfmx]{jsarticle}
とかくのをオススメしています。
モダンではありませんが,使用している人が多く,ネット上にも(玉石混交でありつつも)ドキュメントが充実していて,成熟しているからです。また,細かな微調整をしなくてもきれいなドキュメントが作れます(jlreq
クラスは細かな微調整が必要なイメージです)。LaTeX自体のインストールがよく分からない人は Cloud LaTeX を使いましょう。英文の場合,
\documentclass[a4paper,12pt]{article}
でよいです。各種論文雑誌やarXivへの投稿もこれなら基本困りません。
pLaTeX
や upLaTeX
を採用する場合,本を読む際は「モダンLaTeX」の部分は飛ばしてよいでしょう。LaTeX自体が現在過渡期であるため,今後はモダンLaTeXが主流になっていくかもしれませんが,現在は,最初の一歩としてはレガシーLaTeXを学習するのでも問題ないと思います。
まとめ
「LaTeX美文書作成入門」は \LaTeX をきちんと学びたい人全員にオススメできる書籍であり,私もこの本で多くのことを学んでいます。LaTeXを使い倒す人はぜひ持っておきたい一冊です。全部吸収しようとするのではなく,軽く流し読みをして,あとは辞書的な使い方をするのがよいです。