正規分布の歪度(わいど)・尖度(せんど)について,
\begin{aligned} \dfrac{E[(X-\mu)^3]}{\sigma^3}&= 0, \\ \dfrac{E[(X-\mu)^4]}{\sigma^4} -3&= 0 \\ \end{aligned}
と,どちらも 0 になることが知られています。これについて,その導出の証明を行いましょう。
正規分布の歪度・尖度
定理(正規分布の歪度・尖度)
X\sim N(\mu,\sigma^2 ) とする。このとき, X の歪度・尖度はそれぞれ
\color{red} \begin{aligned} \dfrac{E[(X-\mu)^3]}{\sigma^3}&= 0, \\ \dfrac{E[(X-\mu)^4]}{\sigma^4} -3&= 0 \\ \end{aligned}
である。
歪度(わいど)とは,分布がどれだけ非対称で歪んで(ゆがんで)いるかを表す指標で,尖度(せんど)とは,「正規分布と比べて」分布がどれだけ尖って(とがって)いるかを表す指標です。正規分布は,ちょうどどちらも 0 になります。
最初に,正規分布の確率密度関数を確認しておきましょう。
正規分布のさまざまなまとめについては,以下の記事を参考にしてください。
正規分布の歪度・尖度の導出証明
さて,それぞれについて,導出の証明を行いましょう。
正規分布の歪度の導出
まずは歪度(わいど) \dfrac{E[(X-\mu)^3]}{\sigma^3} を求めます。
- 確率密度関数を用いる方法
- 特性関数の微分を用いる方法
の2通りで証明しましょう。
確率密度関数を用いる方法
証明
期待値と確率密度関数の定義から,
\begin{aligned}&E[(X-\mu)^3] \\ &= \int_{-\infty}^\infty (x-\mu)^3 p(x)\, dx \\ &= \frac{1}{\sqrt{2\pi\sigma^2}} \int_{-\infty}^\infty (x-\mu)^3 e^{-\frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}} \, dx \end{aligned}
y = x-\mu で置換積分すると,
である。 \int_{-\infty}^\infty\bigl| y^3 e^{-\frac{y^2}{2\sigma^2}}\bigr| \, dy < \infty に注意して,被積分関数は奇関数であるから,結局,
となり, E[(X-\mu)^3] = 0 なので,歪度 \dfrac{E[(X-\mu)^3]}{\sigma^3} = 0 となる。
証明終
特性関数の微分を用いる方法
まずは,正規分布の特性関数について復習しておきましょう。
これの証明については,以下の記事を参照してください。
特性関数の微分により, X\sim N(\mu, \sigma^2) のときの3次モーメント E[ X^3] を求めて, E[(X-\mu)^3] = E[X^3]+ 3E[\mu X^2]+ \cdots としても,もちろん良いです。
しかし,平行移動して, Y = X-\mu \sim N(0, \sigma^2) として, Y の特性関数を求め, E[Y^3] を考えた方が速いため,今回はそうしましょう。
証明
Y=X-\mu と平行移動すると, Y\sim N(0,\sigma^2) となる。 E[e^{itY}] = \exp\left(\frac{-\sigma^2t^2}{2}\right) の両辺 t で3回微分すると,
E[(iY)^3e^{itY}] =\sigma^4t(\sigma^2t^2-3) \exp\left(\frac{-\sigma^2t^2}{2}\right).
t=0 を代入すると, E[Y^3] = 0. すなわち, E[(X-\mu)^3] = 0 なので,歪度 \dfrac{E[(X-\mu)^3]}{\sigma^3} = 0 となる。
証明終
正規分布の尖度の導出
さて,次に正規分布の尖度(せんど) \dfrac{E[(X-\mu)^4]}{\sigma^4} について調べましょう。特性関数の微分を用います。
特性関数の微分を用いる方法
証明
Y=X-\mu と平行移動すると, Y\sim N(0,\sigma^2) となる。 E[e^{itY}] = \exp\left(\frac{-\sigma^2t^2}{2}\right) の両辺 t で4回微分すると,
\begin{aligned} &E[(iY)^4 e^{itY}] \\&=\sigma^4(\sigma^4t^4-6\sigma^2t^2+3) \exp\left(\frac{-\sigma^2t^2}{2}\right). \end{aligned}
t=0 を代入すると, E[Y^4] = 3\sigma^4. すなわち, E[(X-\mu)^4] = 3\sigma^4 なので,尖度 \dfrac{E[(X-\mu)^4]}{\sigma^4}-3 = 0 となる。
証明終