実数における右順序位相 (right order topology) とは, (a,\infty) の形を開集合系とする位相空間です。通常の実数の位相より小さい(粗い・弱い)位相です。実数における右順序位相について,その性質をまとめましょう。
実数における右順序位相
定義(実数における右順序位相)
\R の部分集合族について,
\large \color{red} \mathcal{O}_r =\{\emptyset, \R\}\cup \{ (a,\infty)\mid a\in\R \}
と定めると, (\R, \mathcal{O}_r) は位相空間になる。この位相を右順序位相 (right order topology) またはスコット位相 (Scott topology) という。
閉集合系は \mathcal{F}_r = \{\emptyset, \R\}\cup \{ (-\infty,a]\mid a\in\R \} とかけますね。

実数における右順序位相の性質
可算公理・分離公理・コンパクト性・連結性について確認します。
実数における右順序位相と可算公理
\mathcal{B}_r = \{(q, \infty)\mid q\in\mathbb{Q}\} はこの位相の開基であり,可算集合なので,第二可算です。よって第一可算でもあります。また,\mathbb{Q} や \mathbb{Z} は稠密な可算集合なので可分です。
距離化不可能なのは,次に紹介しますが,ハウスドルフではないからです。
実数における右順序位相と分離公理
| T_0 (コルモゴロフ空間) | T_1,T_2, T_3 (ハウスドルフ空間) | T_4,T_5 |
|---|---|---|
| 〇 | × | 〇 |
本記事では, T_0 から T_5 は以下のように定義しています。この定義は文献によって変わりますから,注意してください。
| 名称 | 定義 |
|---|---|
| T_0 コルモゴロフ空間 (Kolmogorov space) | 任意の異なる2点 x,y\in X に対して, x\in O_x,\, y\notin O_x となる開集合 O_x または x\notin O_y,\, y\in O_y となる開集合 O_y の少なくとも一方が取れる |
| T_1 | 任意の異なる2点 x,y\in X に対して, x\in O_x,\, y\notin O_x となる開集合 O_x と x\notin O_y, \,y\in O_y となる開集合 O_y の両方が取れる |
| T_2 ハウスドルフ空間 (Hausdorff space) | 任意の異なる2点 x,y\in X に対して, x\in O_x, \, y\in O_y,\, O_x\cap O_y=\emptyset となる開集合 O_x, O_y が取れる |
| T_3 | 任意の閉集合 F と任意の点 x\in X\setminus F に対して, F\subset O_F,\, x\in O_x,\, O_F\cap O_x=\emptyset となる開集合 O_F, O_x が取れる |
| T_4 | 任意の2つの互いに素な空でない閉集合 F,G\subset X に対して, F\subset O_F,\, G\subset O_G,\, O_F\cap O_G=\emptyset となる開集合 O_F, O_G が取れる |
| T_5 | \overline{A}\cap B=A\cap \overline{B}=\emptyset をみたす任意の2つの空でない集合 A,B\subset X に対して, A\subset O_A,\, B\subset O_B,\, O_A\cap O_B=\emptyset となる開集合 O_A, O_B が取れる |
異なる2点 x,y\in \R に対し, x<y ならば, (x,\infty) が x を含まず y を含む開集合になるので, T_0 ではあります。一方で, y を含まず x を含む開集合は取れないので, T_1 ではありません。T_2, T_3 でもありません。
一方で,互いに素な空でない閉集合をそもそも2つ取ってくることができないので, T_4 は正しいです(空虚な真)。同じような理由で T_5 も正しいです。
実数における右順序位相とコンパクト性
定義を確認しておきましょう。
| 名称 | 定義 |
|---|---|
| コンパクト (compact) | 任意の開被覆が有限部分被覆をもつ |
| 可算コンパクト (countably compact) | 任意の可算開被覆が有限部分被覆をもつ |
| 点列コンパクト (sequentially compact) | 任意の点列が収束部分列をもつ |
| σコンパクト (σ-compact) | コンパクト集合の可算和でかける空間 |
| リンデレーフ (Lindelöf) | 任意の開被覆が可算部分被覆をもつ |
| 局所コンパクト (locally compact) | 任意の点がコンパクトな近傍をもつ |
| 強局所コンパクト (strongly locally compact) | 任意の点がコンパクトな閉近傍をもつ |
| 可算メタコンパクト (countably metacompact) | 任意の可算開被覆が点有限な(すなわち,各点ごとに有限個の集合でしか覆われていない)開細分被覆をもつ |
\R の開被覆 \{(-n, \infty)\mid n\ge 1\} に有限部分被覆がないため,コンパクト・可算コンパクトではありません。また,可算メタコンパクトでないこともわかるでしょう。第二可算ならコンパクトと点列コンパクトは同値なので,点列コンパクトでもありません。
ただし,開集合 (a, \infty) において,その開被覆は (b,\infty)\;(-\infty\le b\le a) の形を少なくとも一つ含むので, (a, \infty) はコンパクトです。
よって, (\R,\mathcal{O}_r) は局所コンパクトです。ただし,任意の点の閉近傍は \R のみなので,強局所コンパクトではありません。 (a,\infty) がコンパクトですが,相対コンパクトではない例にもなっています。
また,(a, \infty) はコンパクトなので, \R = \bigcup_{n=1}^\infty (-n,\infty) はσコンパクトです。よってリンデレーフでもあります。
実数における右順序位相と連結性
定義を確認しておきましょう。
| 名称 | 定義 |
|---|---|
| 連結 (connected) | 2つの互いに素な空でない開集合 U,V で, U\cup V=X となっているものは存在しない |
| 弧状連結 (path connected) | 任意の異なる2点 x,y\in X について,ある連続写像 f\colon [0,1]\to X で, f(0)=x, f(1)=y となるものが存在する |
| hyperconnected | 任意の空でない2つの開集合が常に共通部分を持つ |
| ultraconnected | 任意の空でない2つの閉集合が常に共通部分を持つ |
| 局所連結 (locally connected) | 全ての点において,連結集合からなる基本近傍系を持つ |
hyperconnected・ultraconnectedは明らかでしょう。ultraconnectedならば弧状連結であり,弧状連結ならば連結です。局所連結も明らかでしょう。
実数における右順序位相と下半連続
(\R, \mathcal{O}) を,通常の位相を備えた実数全体の集合とします。このとき, f\colon (\R,\mathcal{O})\to (\R,\mathcal{O}_r) が連続であるとことと, f\colon \R\to\R が下半連続 (lower semicontinuous) であることは同値です。



