集合の内点・外点・境界点と,その集合である内部(開核)・外部・境界について,具体例を用いながら詳しく図解していきます。まず,ユークリッド空間において考えることでイメージを膨らませ,それからより一般的な距離空間や位相空間における内部(開核)・外部・境界を考えます。
1. ユークリッド空間における内部(開核)・外部・境界
まずは,ユークリッド空間における内部(開核)・境界・外部を定義し,具体例を見ていきましょう。
n 次元ユークリッド空間 \R^n に対し,2点 x=(x_1, \ldots, x_n), \, y = (y_1, \ldots , y_n)\in \R^n の距離は
\textcolor{red}{\large d(x, y)}=\sqrt{(x_1-y_1)^2+\cdots +(x_n-y_n)^2}
です。 \varepsilon >0 に対し,点 a\in \R^n における \varepsilon-近傍を
とします。すなわち,a\in \R^n と距離が \varepsilon 未満の点の集合です。中心 a 半径 \varepsilon の n 次元開球体といってもいいでしょう。
1.1 ユークリッド空間における内部(開核)
定義1.1(ユークリッド空間における内部(開核))
A\subset \R^n とする。
a\in \R^n が以下の条件をみたすとき, a は A の内点 (interior point) という。
ある \varepsilon >0 が存在して,
\color{red}\Large B_\varepsilon(a) \subset A.
A の内点全体の集合を A の内部 (interior) または開核といい, \large A^\circ または \large A^i または \color{red}\large \operatorname{Int}(A) とかく。
上の図で, a は A の内点です。
a\in B_\varepsilon(a) ですから, a が A の内点なら a\in A が成立します。よって, \color{red}\operatorname{Int}(A)\subset A です。具体例を見てみましょう。
例1.1.1( \R その1)
\R において,
- 開区間 (0,1) の内部は (0,1) そのものである。
- 閉区間 [0,1] の内部は (0,1) である。
すなわち,
- \operatorname{Int}\bigl((0,1)\bigr) = (0,1)
- \operatorname{Int}\bigl([0,1]\bigr)=(0,1)
である。
a\in (0,1) とすると,0< \varepsilon \le \min\{ a, 1-a\} とすることで,
(a-\varepsilon, a+\varepsilon)\subset (0,1)
とできます。 (a-\varepsilon, a+\varepsilon) とは,\R における B_\varepsilon (a) のことです。よって,任意の a\in (0,1) は内点と分かりますから, (0,1) の内部は (0,1) そのものです。
[0,1] の内部について,上の議論より, (0,1) が [0,1] の内部に入るので,問題は2点 0,1 が [0,1] の内点に入るか否かですが,これは否です。なぜなら,
(-\varepsilon , \varepsilon)\subset [0,1]
をみたす \varepsilon>0 は存在しないので, 0 は内点ではないですし,
をみたす \varepsilon>0 も存在しないので, 1 も内点ではないからです。
例1.1.2(\R その2)
-\infty<a<b<\infty とする。\R において,
- \operatorname{Int}\bigl((a,b)\bigr)=\operatorname{Int}\bigl([a,b]\bigr)=\operatorname{Int}\bigl([a,b)\bigr)=\operatorname{Int}\bigl((a,b]\bigr)=(a,b)
- \operatorname{Int}\bigl(\R\bigr)=\R
- \operatorname{Int}\bigl((-\infty, a)\bigr)=\operatorname{Int}\bigl((-\infty, a]\bigr)=(-\infty, a)
- \operatorname{Int}\bigl( (a, \infty)\bigr)=\operatorname{Int}\bigl( [a, \infty)\bigr)= (a,\infty)
例1.1と同様にすれば,どれもわかるはずです。2.については,一般に \R^n の内部は \R^n そのものといえます。
例1.1.3( \R その3)
\R において,
- a\in\R に対し,1点集合 \{a\} の内部は空集合 \emptyset である。すなわち,\operatorname{Int}\bigl(\{a\})=\emptyset
- 有理数全体の集合 \mathbb{Q} について, \operatorname{Int}\bigl(\mathbb{Q}\bigr)=\emptyset
- \operatorname{Int}\bigl( (0, 1)\cup [2,3]\bigr) =(0,1)\cup (2,3)
- \operatorname{Int}\bigl([-1, 0)\cup \{1\}\cup [2,\infty)\bigr) = (-1, 0)\cup(2,\infty)
1.について, (a-\varepsilon, a+\varepsilon)\subset \{a\} をみたす \varepsilon>0 はありませんから, a は \{a\} の内点ではありませんね。
2.についても, q\in \mathbb{Q} に対し, (q-\varepsilon,q+\varepsilon)\subset \mathbb{Q} をみたす \varepsilon >0 はありませんから,任意の q\in\mathbb{Q} は \mathbb{Q} の内点ではありません。
例1.1.4( \mathbb{R}^2 その1)
\R^2 について,
- s=(a,b)\in \R^2 中心,半径 r>0 の開円板
\small \begin{aligned}&B_s(r)\\&= \{ (x,y)\in \R^2\mid (x-a)^2+(y-b)^2< r^2\}\end{aligned}
の内部は B_s(r) そのものである。 - s=(a,b)\in \R^2 中心,半径 r >0 の閉円板
\small \begin{aligned}&\overline{B_s(r)}\\&= \{ (x,y)\in \R^2\mid (x-a)^2+(y-b)^2\le r^2\}\end{aligned}
の内部は B_s(r) である。 - a<b, \, c<d に対し,\operatorname{Int}\bigl((a,b)\times (c,d)\bigr)=\operatorname{Int}\bigl([a,b]\times [c,d]\bigr)=\operatorname{Int}\bigl([a,b]\times (c,d)\bigr)=\operatorname{Int}\bigl((a,b]\times [c,d)\bigr)=(a,b)\times (c,d)
ちょっとややこしいですが,1,2.における (a,b)\in \R^2 は点であり,3.における (a,b)\times (c,d)\subset \R^2 の (a,b), (c,d) は \R における開区間です。
例1.1.5( \mathbb{R}^2 その2)
\R^2 について,
- \operatorname{Int}\bigl(\{ (x,\sin x)\mid x\in \R\} \bigr)=\emptyset
- \operatorname{Int}\bigl(\{ (x,y)\in \R^2\mid y\ge 0\} \bigr)=\{ (x,y)\in \R^2\mid y> 0\}
\R^2 において,曲線 \{ (x, f(x))\mid x\in \R\} の内部は空集合です。
1.2 ユークリッド空間における外部
つづいて外部を定義しましょう。
定義1.2(ユークリッド空間における外部)
A\subset \R^n とする。
a\in \R^n が A^c の内点であるとき, a は A の外点 (exterior point) であるという。
A の外点全体の集合(すなわち A^c の内部) を A の外部 (exterior) といい, \large A^e または \color{red}\large \operatorname{Ext}(A) とかく。
定義より,
\large \color{red} \operatorname{Ext}(A) = \operatorname{Int}(A^c)
が成立します。
B_\varepsilon(a)\subset A^c と B_\varepsilon(a)\cap A=\emptyset は同じことです。 B_\varepsilon(a)\subset A^c という式が, a が A^c の内点であることを表すので,外点は以下のように定義することもできます。
定義より, a が A の外点なら a\in A^c です。よって,\color{red} \operatorname{Ext}(A)\cap A=\emptyset が成り立ちます。
例1.2.1(\R その1)
\R において,
- \operatorname{Ext}\bigl((0,1)\bigr) = (-\infty, 0)\cup (1,\infty)
- \operatorname{Ext}\bigl([0,1]\bigr)=(-\infty, 0)\cup (1,\infty)
である。
1.について,外部の定義より,
\begin{aligned}\operatorname{Ext}\bigl((0,1)\bigr) &=\operatorname{Int}\bigl((0,1)^c\bigr) \\ &= \operatorname{Int}\bigl((-\infty, 0]\cup [1,\infty) \bigr) \\ &= (-\infty, 0)\cup (1,\infty)\end{aligned}
ですね。2.も同じです。
例1.2.2(\R その2)
\R において,
- \operatorname{Ext}\bigl(\{a\}\bigr) = (-\infty, a)\cup (a,\infty)
- \operatorname{Ext}\bigl(\emptyset\bigr)=\R
- \operatorname{Ext}\bigl(\mathbb{Q}\bigr)=\emptyset
- \operatorname{Ext}\bigl([-1, 0)\cup \{1\}\cup [2,\infty)\bigr)=(-\infty, -1)\cup (0, 1)\cup (1,2)
である。
例1.2.3(\R^2)
\R^2 において,
- s=(a,b)\in \R^2 中心,半径 r の開円板
\small \begin{aligned}&B_s(r)\\&= \{ (x,y)\in \R^2\mid (x-a)^2+(y-b)^2< r^2\}\end{aligned}
あるいは閉円板
\small \begin{aligned}&\overline{B_s(r)}\\&= \{ (x,y)\in \R^2\mid (x-a)^2+(y-b)^2\le r^2\}\end{aligned}
の外部は,どちらも
\small \begin{aligned}&\bigl(\overline{ B_s(r)}\bigr)^c \\&= \{ (x,y)\in \R^2\mid (x-a)^2+(y-b)^2> r^2\}\end{aligned}
である。 - S=\{ (x,\sin x)\mid x\in \R\} とすると, \operatorname{Ext}(S)=\R^2\setminus S
- \operatorname{Ext}\bigl(\{ (x,y)\in \R^2\mid y\ge 0\} \bigr)=\{ (x,y)\in \R^2\mid y< 0\}
1.3 ユークリッド空間における境界
次に,境界について定義しましょう。
定義1.3(ユークリッド空間における境界)
A\subset \R^n とする。
a\in \R が A の内点でも外点でもないとき, a は A の境界点 (boundary point) であるという。
A の境界点全体の集合(すなわち A の内部でも外部でもない点の集合)を A の境界 (boundary, frontier) といい, \large A^f または \large\operatorname{bd}(A) または \color{red}\large \partial A とかく。
定義より,
\large \partial A = \Bigl( \operatorname{Int}(A)\cup \operatorname{Ext}(A)\Bigr)^c
とかけます。また, \partial A=\partial A^c であり,さらに
のように,互いに交わらない3つの集合の和集合として, X を分解することができます。
内点とは,「ある \varepsilon >0 が存在して B_\varepsilon (a)\subset A」でしたから,内点でないとは,「任意の \varepsilon >0 に対して B_\varepsilon (a) \cap A^c \ne \emptyset 」となります。
同様に外点とは「ある \varepsilon >0 が存在して B_\varepsilon (a)\subset A^c」でしたから,外点でないとは,「任意の \varepsilon >0 に対して B_\varepsilon (a) \cap A \ne \emptyset 」となります。
境界点とは,「内点でない」かつ「外点でない」ような点でしたから,境界点の定義は以下のように書き換えることができます。
内部・外部のときに用いた例をそのまま活用しましょう。内部でも外部でもない点が境界点です。
例1.3.1( \R)
\R において,
- \partial (0,1)=\partial [0, 1]=\{0, 1\}
- \partial \{0\} = \{0\}
- \partial \mathbb{Q}=\R
- \partial \bigl([-1, 0)\cup \{1\}\cup [2,\infty)\bigr)=\{ -1, 0, 1, 2\}
例1.3.2(\R^2)
\R^2 において,
- s=(a,b)\in \R^2 中心,半径 r の開円板
\small \begin{aligned}&B_s(r)\\&= \{ (x,y)\in \R^2\mid (x-a)^2+(y-b)^2< r^2\}\end{aligned}
あるいは閉円板
\small \begin{aligned}&\overline{B_s(r)}\\&= \{ (x,y)\in \R^2\mid (x-a)^2+(y-b)^2\le r^2\}\end{aligned}
の境界は,どちらも円周
\small\{ (x,y)\in \R^2\mid (x-a)^2+(y-b)^2 =r^2\}
である。 - S=\{ (x,\sin x)\mid x\in \R\} とすると, \partial S= S
- \partial \{ (x,y)\in \R^2\mid y\ge 0\} =\{ (x,0)\mid x\in \R\}
1.4 ユークリッド空間における内部(開核)・外部・境界のまとめ
以下の図が分かりやすいでしょう。 \varepsilon-近傍が A 内に入るようにできるときは内点,逆に A^c 内に入るようにできるときは外点,どんな \varepsilon>0 でも A にも A^c にも共有点をもつのが境界点です。
例もまとめておきましょう。
例1.4.1(\R)
\R において,
\small \begin{aligned} \operatorname{Int}\bigl( (0,1)\bigr)= \operatorname{Int}\bigl( [0,1]\bigr)&= (0,1), \\ \operatorname{Ext}\bigl((0,1)\bigr)=\operatorname{Ext}\bigl([0,1]\bigr)&= (-\infty, 0)\cup (1, \infty), \\ \partial (0,1)=\partial [0,1] &= \{0, 1\}\end{aligned} \begin{aligned} \operatorname{Int}\bigl( \{a\}\bigr)&=\emptyset, \\ \operatorname{Ext}\bigl(\{a\} \bigr)&=(-\infty, a)\cup (a, \infty), \\ \partial \{a\} &=\{a\}\end{aligned} \begin{aligned} \operatorname{Int}\bigl( (0,1)\cap\mathbb{Q}\bigr)&= \emptyset, \\ \operatorname{Ext}\bigl((0,1) \cap\mathbb{Q}\bigr)&= (-\infty, 0)\cup (1,\infty), \\ \partial \bigl((0,1)\cap\mathbb{Q} \bigr)&= [0,1] \end{aligned}例1.4.2(\R^2)
\R^2 において,
- s=(a,b)\in \R^2 中心,半径 r の開円板
\small \begin{aligned}&B_s(r)\\&= \{ (x,y)\in \R^2\mid (x-a)^2+(y-b)^2< r^2\}\end{aligned}
あるいは閉円板
\small \begin{aligned}&\overline{B_s(r)}\\&= \{ (x,y)\in \R^2\mid (x-a)^2+(y-b)^2\le r^2\}\end{aligned}
の内部・外部・境界は,それぞれ
\begin{aligned}\small &\{ (x,y)\in \R^2\mid (x-a)^2+(y-b)^2 <r^2\},\\ &\{ (x,y)\in \R^2\mid (x-a)^2+(y-b)^2 >r^2\},\\ &\{ (x,y)\in \R^2\mid (x-a)^2+(y-b)^2 =r^2\}\end{aligned}
である。 - S=\{ (x,\sin x)\mid x\in \R\} とすると,
\begin{aligned}\operatorname{Int}(S) &= \emptyset, \\ \operatorname{Ext}(S) &=\R^2\setminus S,\\ \partial S&= S \end{aligned}
2. 距離空間における内部(開核)・外部・境界
距離空間における内部(開核)・境界・外部の定義はユークリッド空間と全く同じです。距離空間 (X, d) において,
B_\varepsilon(a)=\{ x\in \R^n \mid d(a, x)<\varepsilon\}
を点 a\in \R^n における \varepsilon-近傍とします。
定義2(距離空間における内部(開核)・外部・境界)
(X, d) を距離空間とし, A\subset X とする。
- a\in X に対し,ある \varepsilon>0 が存在して, \color{red}\large B_\varepsilon(a)\subset A とできるとき, a を内点 (interior point) という。内点全体の集合を A の内部 (interior) または開核という。
- A^c の内点を A の外点 (exterior point) といい, A の外点全体の集合を A の外部 (exterior) という。
- A の内点でも外点でもない点を A の境界点 (boundary point) といい, A の境界点全体の集合を A の境界 (boundary, frontier)
外部・境界について,ユークリッド空間のときに別の定義を紹介したように,距離空間においても全く同じです。単に \R^n を距離空間 X に変えるだけです。
例2.1(離散距離)
(X, d) を離散距離空間とする。すなわち, a,b\in X に対し,
d(a,b)=\begin{cases} 0 &a=b, \\ 1 & a\ne b\end{cases}
である。このとき,任意の部分集合 A\subset X に対し,
である。
a\in A に対し, B_{1/2}(a)=\{a\} なので,
a\in B_{1/2}(a)\subset A
とかけます。よって,任意の a\in A は A の内点です。ゆえに \operatorname{Int}(A)=A です。同様に外点についても言えるので,内部でも外部でもない境界は空集合になります。
離散距離空間について詳しくは離散距離空間とは~定義と性質~で解説しています。
3. 位相空間における内部(開核)・外部・境界
位相空間には距離がありませんから, \varepsilon-近傍という概念はなく,これまでと同じ定義ではいけません。ただし,内部(開核)さえ定義してしまえば,外部・境界の定義はこれまでと同じです。
シンプルな定義を紹介します。
定義3.1(位相空間における内部(開核))
X を位相空間とし, A\subset X とする。
A に含まれる最大の開集合を A の内部 (interior) または開核といい, \large A^\circ または \large A^i または \color{red}\large \operatorname{Int}(A) とかく。
内部に属する各点を内点 (interior point) という。
\{O_\lambda\}_{\lambda\in \Lambda} を A に含まれる開集合全体の集合としたとき, \bigcup_{ \lambda\in \Lambda} O_\lambda も A に含まれる開集合ですから,これが「 A に含まれる最大の開集合」です。
ちょっと定義の雰囲気がユークリッド空間・距離空間のときと違うと思ったかもしれません。ただ,今はシンプルな定義を紹介したので,もう少しユークリッド空間・距離空間のときの定義に寄せたものも述べておきましょう。
ユークリッド空間・距離空間では \varepsilon-近傍 B_\varepsilon (a) だったものが,開集合 O に変わっています。位相空間にも近傍の概念はありますから,定義において,「開集合」ではなく「近傍」にしても大丈夫です(が,位相空間の定義は開集合から出発することが多く,開集合にした方が分かりやすいと思うので,いまは「開集合」にしています)。
内部(開核)さえ定義してしまえば,外部・境界の定義はユークリッド空間・距離空間のときと同じです。
定義3.2(位相空間における外部・境界)
- A^c の内点を A の外点 (exterior point) といい, A の外点全体の集合を A の外部 (exterior) という。
- A の内点でも外点でもない点を A の境界点 (boundary point) といい, A の境界点全体の集合を A の境界 (boundary, frontier) という。
具体例を挙げておきましょう。
例3.1( \mathbb{Q} に相対位相を入れたもの)
有理数全体 \mathbb{Q} に \R の相対位相(距離から定まる自然な位相)を入れた位相空間について,
\begin{aligned} \operatorname{Int}\bigl( (0,\sqrt{2})\cap\mathbb{Q}\bigr)&= (0,\sqrt{2})\cap\mathbb{Q}, \\ \operatorname{Ext}\bigl((0,\sqrt{2}) \cap\mathbb{Q}\bigr)&= \bigl( (-\infty, 0)\cup (\sqrt{2}, \infty) \bigr)\cap \mathbb{Q}, \\ \partial (0,\sqrt{2})\cap\mathbb{Q} &= \{0\}\end{aligned}
である。
\R においては,
\begin{aligned} \operatorname{Int}\bigl( (0,\sqrt{2})\cap\mathbb{Q}\bigr)&= \emptyset, \\ \operatorname{Ext}\bigl((0,\sqrt{2}) \cap\mathbb{Q}\bigr)&= (-\infty, 0)\cup (\sqrt{2},\infty), \\ \partial \bigl((0,\sqrt{2})\cap\mathbb{Q} \bigr)&= [0,\sqrt{2}] \end{aligned}
ですから,その違いに注意してください。
例3.2( \R に異なる位相を入れたもの)
\mathcal{O}=\{(-\infty, a)\mid a\in \R\}\cup\{ \emptyset, \R \} とすると, (\R,\mathcal{O}) は位相空間になる。このとき,
\begin{aligned} \operatorname{Int}\bigl( (0,1)\bigr)&= \emptyset, \\ \operatorname{Ext}\bigl((0,1) \bigr)&= (-\infty, 0), \\ \partial (0,1) &= [0, \infty) \end{aligned}
また,
である。
最後に,内部(開核)の基本的性質についていくつか紹介しておきます。
定理(内部(開核)の性質)
(X, \mathcal{O}) を位相空間とし, A, B\subset X とする。このとき,
- \operatorname{Int}(\emptyset)=\emptyset, \quad \operatorname{Int}(X) = X.
- \operatorname{Int}(A)\subset A.
- \operatorname{Int}(\operatorname{Int}(A))=\operatorname{Int}(A).
- \operatorname{Int}(A\cap B) = \operatorname{Int}(A)\cap \operatorname{Int}(B).
1.から3.は定義から明らかです。4.のみ証明しましょう。
4.の証明
\operatorname{Int}(A)\cap \operatorname{Int}(B) は開集合であり,かつ \operatorname{Int}(A)\cap \operatorname{Int}(B)\subset A\cap B が成り立つから, \operatorname{Int}(A)\cap \operatorname{Int}(B)\subset \operatorname{Int}(A\cap B) である。
また, A\cap B\subset A より, \operatorname{Int}(A\cap B)\subset \operatorname{Int}(A) であり,同様に \operatorname{Int}(A\cap B)\subset \operatorname{Int}(B) でもあるから, \operatorname{Int}(A\cap B)\subset \operatorname{Int}(A)\cap \operatorname{Int}(B) が言える。よって題意は示された。
証明終
注意ですが, \operatorname{Int}(A\cup B) \supset \operatorname{Int}(A)\cup \operatorname{Int}(B) であり,これは必ずしも = にはなりません。
実際, A\cup B\supset A より, \operatorname{Int}(A\cup B)\supset \operatorname{Int}(A) であり,同様に \operatorname{Int}(A\cup B)\supset \operatorname{Int}(B) なので, \operatorname{Int}(A\cup B)\supset \operatorname{Int}(A)\cup \operatorname{Int}(B) がいえます。
一方で A =(0,1),\; B=[1,2) とすると,
\begin{aligned}\operatorname{Int}(A\cup B) &= (0,2),\\ \operatorname{Int}(A)\cup \operatorname{Int}(B) &= (0,1)\cup (1,2)\end{aligned}
となり,等号が成り立たない例があります。