数学における,集合上の2つの元の関係を表す「二項関係」について,その定義と具体例を解説します。
二項関係とは
ある集合 A があったとしましょう。この2つの元 x,y\in A に対し,何らかの「関係」が定まっているとします。このとき, x,y には関係があるといいます。
このように,ある集合の2つの元に定める「関係」を,二項関係といいます。
たとえば, A を人間たちの集合とします。人 x,y\in A が友達であるとき, x,y は「関係がある」と言うことにしましょう。これが「二項関係」です。
この関係に名称をつけるなら「友達関係」ですね。友達でない二人の人には,「友達関係はない」ですね。
他にも,人間同士には,「知り合いの関係」「部下と上司の関係」「同僚の関係」「同国籍の関係」など,さまざまな関係を定めることができそうですね。
あるいは,\mathbb{R} を実数の集合としましょう。この上には, x,y に対して, x\le y あるいは y\le x という「二項関係」が定まっています。
これを順序関係(大小関係)と言ったりします。
二項関係の厳密な定義
1つの集合の上には,いろいろな「二項関係」を考えることが可能ですから,一般に数学において「二項関係」を定義するときは,関係があるかないかのみを定義します。
関係があるかないかを数学的に厳密に定義したいとしましょう。果たしてどうすればよいでしょうか。厳密な定義を見てみましょう。
定義(二項関係)
R が A 上の二項関係 (binary relation) であるとは,直積集合 A^2=A\times A の部分集合
\color{red}R\subset A\times A
のことである。 (x,y)\in R のことを, \color{red}xRy ともかく。
R という記号を持ちましたが,実際は \sim, \le をはじめ,さまざまな記号が用いられます。
ちょっと定義に戸惑ったかもしれません。数学的に「2つの関係」の有無を定義しようと思うと,関係があれば属するような集合を考えるというわけです。
(x,y)\in R なら xRy という関係があると考え, (x,y)\notin R なら,そのよう関係がないと考えるわけですね。
たとえば, \mathbb{R} 上の順序関係(大小関係) R は,集合でかけば
R=\{ (x,y)\in\mathbb{R}^2\mid x\le y\}
とかけます。
なお,実際は x,y は別の集合に属していてもよく,たとえば R \subset A\times B とすることで, A,B 間の二項関係を考えることもできます。
ただ,やはり「関係」を考えるにあたっては,それがどんな関係かは気になるところでしょう。実際,数学では名前の付くような特別な「関係」を考察することで,議論が進められます。ここでは,代表的な2つの「二項関係」をみていきましょう。
二項関係の具体例
二項関係の例1((半)順序関係).
A 上の二項関係 R が以下を全てみたすとき,(半)順序関係という。
- 任意の x に対し, xRx (反射律)
- xRy, \;yRz \implies xRz (推移律)
- xRy ,\; yRx \implies x=y (反対称律)
関係に R という記号を用いましたが,順序関係には普通 \le という記号を用いて, x\le y とかかれます。実際,実数上の順序関係(大小関係)は,上の3つの関係をみたしますね。
順序関係については,以下で解説しています。
二項関係の例2(同値関係).
A 上の二項関係 R が以下を全てみたすとき,同値関係という。
- 任意の x に対し, xRx (反射律)
- xRy, \;yRz \implies xRz (推移律)
- xRy \implies yRx (対称律)
同値関係は,「同じものである」と思える関係のことです。関係には,よく \sim という記号を用いて, x\sim y という風にも書かれます。これについては,以下で解説しています。