PR

コラッツ予想(コラッツの問題)とは

数論
記事内に広告が含まれています。

コラッツ予想(コラッツの問題; Collatz conjecture; 角谷予想)は,整数論に関する予想で,主張自体は中高生でも理解できそうなくらい簡単にもかかわらず,多くの数学者の頭を悩ませる未解決問題の1つとして有名です。これについて,その主張を解説しましょう。

コラッツ予想とは

まずは,コラッツ予想の主張を確認しましょう。「予想」なので,正しいか正しくないかが分かっていません。未解決問題なのです。

コラッツ予想の主張

コラッツ予想 (Collatz conjecture)

a を正の整数とする。 a_1 = a とし,以下の式によって,数列 \{a_n\} を定める。

a_{n+1} = \begin{cases} 3a_n +1 &\text{if } a_n \text{ is odd,} \\ a_n / 2 &\text{if } a_n \text{ is even.} \end{cases}


このとき,任意の a に対して, a_m = 1 となる m が存在する。(oddは「奇数」,evenは「偶数」を指す)

別の言葉で換言すると,正の整数 a をスタートし,

  • 奇数ならば3倍して1を足す
  • 偶数ならば2で割る

ことを繰り返すと,いずれ必ず 1 になるといえます。

このように,中高生でも理解できそうな簡明な主張にもかかわらず,80年以上も多くの数学者の頭を悩ませる「難しい問題」であり,時折進展があったとか無かったとかいう話を耳にすることはあるものの,正しいか正しくないかは未だ不明です。

具体例を挙げましょう。

コラッツ予想の具体例

例1.

a = 3 とすると,

3\to 10 \to 5 \to 16\to 8\to 4\to 2 \to 1


となって 7 回のステップで 1 に到達する。

例2.

a=11 とすると,

11\to 34\to 17\to 52\to 26\to 13 \to 40\to 20\to 10 \to 5 \to 16\to 8 \to 4 \to 2\to 1


となって, 13 回のステップで 1 に到達する。

途中からは例1と同じ数字が出現しますね。

例3.

a=27 とすると,

\scriptsize 27\to 82\to 41\to 124\to 62\to 31\to 94\to 47\to 142\to 71\to 214\to 107\to 322\to 161\to 484\to 242\to 121\to 364\to 182\to 91\to 274\to 137\to 412\to 206\to 103\to 310\to 155\to 466\to 233\to 700\to 350\to 175\to 526\to 263\to 790\to 395\to 1186\to 593\to 1780\to 890\to 445\to 1336\to 668\to 334\to 167\to 502\to 251\to 754\to 377\to 1132\to 566\to 283\to 850\to 425\to 1276\to 638\to 319\to 958\to 479\to 1438\to 719\to 2158\to 1079\to 3238\to 1619\to 4858\to 2429\to 7288\to 3644\to 1822\to 911\to 2734\to 1367\to 4102\to 2051\to 6154\to 3077\to 9232\to 4616\to 2308\to 1154\to 577\to 1732\to 866\to 433\to 1300\to 650\to 325\to 976\to 488\to 244\to 122\to 61\to 184\to 92\to 46\to 23\to 70\to 35\to 106\to 53\to 160\to 80\to 40\to 20\to 10\to 5\to 16\to 8\to 4\to 2\to 1


となって, 111 回のステップで 1 に到達する。

このように,一見27という単純な数からスタートしても,非常に多くの数を「経由」し,多くのステップがかかることがあります。コラッツ予想は複雑な問題なわけです。

多くの数において,ちゃんと有限回のステップで 1 に到達することが,コンピューターを用いた数値計算によって確認されています。Wikipediaによると,初期値が a = 2^{68}\approx 2.95 \times 10^{20} 程度までは確認されているようです。

正しいか正しくないかを明らかにするためには,任意の a に対して成り立つことを証明するか,あるいは,逆にある a に対して 1 に到達しない「反例」を挙げねばなりません。上の数値計算は,反例がないかどうかを探索しているわけですね。

コラッツ予想は多額の懸賞金がかけられている

2021年7月7日,とある音楽系の日本企業が,コラッツ予想に1億2000万円の懸賞金をかけると発表しました。数学の未解決問題にかけられている懸賞金としては,「ミレニアム問題」と呼ばれる,複数の問題が有名ですが,これの懸賞金が1問あたり100万ドルです。これを超える額ですね。実際,史上最高額だそうです。夢がありますね。

「3倍する」部分を変えると……

さて,少しだけコラッツ予想を掘り下げてみましょう。コラッツ予想は

a_{n+1} = \begin{cases} \textcolor{red}{3}a_n +1 &\text{if } a_n \text{ is odd,} \\ a_n / 2 &\text{if } a_n \text{ is even.} \end{cases}


として定義されるのでした。この 3 の部分を別の数字に変えてみましょう。たとえば,単に

a_{n+1} = \begin{cases} a_n +1 &\text{if } a_n \text{ is odd,} \\ a_n / 2 &\text{if } a_n \text{ is even.} \end{cases}


とすると,これが有限回のステップで 1 に到達するのは明らかです。なぜなら,「数が増える余地がないから」です。「 3 以上の奇数に 1 を足して 2 で割る」という操作を行うと,必ず元の数より小さくなります。

それでは,

a_{n+1} = \begin{cases} \textcolor{red}{5}a_n +1 &\text{if } a_n \text{ is odd,} \\ a_n / 2 &\text{if } a_n \text{ is even.} \end{cases}


とすればどうなるでしょうか。このとき, a=13 とすると,

13\to 66\to 33\to 166\to 83\to 416\to 208\to 104\to 52\to 26\to 13


となることが分かり, 1 に到達する前に再び 13 に戻ってきてしまいます。すなわち, 13 はループするのです。これは,永遠に 1 には到達しないことを意味しており,「有限回で 1 に到達する」とは言えなくなってしまいますね。

コラッツ予想を解こう

数論(整数論)には,コラッツ予想のような,「理解はしやすいが解くのは難しい」予想がたくさんあります。このような問題がもし解ければ,歴史に名を刻む英雄になれるでしょう。ぜひ深く考えてみたいものですね。