無限区間でリーマン和(区分求積)を考えることが可能である Directly Riemann Integrable (dRi) な関数について,その定義と例を紹介します。
Directly Riemann Integrableの定義
広義積分 (improper integral) は「区間が有界でない」ものと「関数がある点で有界でない」ものがありました。これらは,どちらにおいても,
有界な上でのリーマン和 → 有界な上でのリーマン積分 → リーマン積分を極限により拡張
の順番を辿って定義しました。
Directly Riemann Integral とは,「区間が有界でない」ものについて,最初から無限区間上でリーマン和を考えようというものです。もともとの広義積分において,リーマン和は有界区間上でしか考えていませんでしたが,そうではなく,直接リーマン和を考えているわけですね。
定義(Directly Riemann Integrable)
f\colon [0,\infty)\to [0,\infty) を有界な関数とする。
\begin{aligned} S_h &=h \sum_{n=1}^\infty \sup_{(n-1)h\le x\le nh} f(x), \\ s_h &= h \sum_{n=1}^\infty \inf_{(n-1)h\le x\le nh} f(x) \end{aligned}
と定める。 \lim_{h\to 0+} S_h = \lim_{h\to 0+} s_h<\infty のとき,f は directly Riemann integrable (dRi) という。
無限区間上で区分求積を考えていますね。 S_h が上からの近似で, h\to 0+ とすると単調減少し, s_h は下からの近似で, h\to 0+ とすると単調増加します。
このとき,以下の定理は基本的です。
定理(dRi なら広義リーマン積分可能)
有界な関数 f\colon [0,\infty)\to [0,\infty) が dRi であるとする。このとき, \int_0^\infty f(x)\,dx (広義リーマン積分)は収束して,
\color{red}\lim_{h\to 0+} S_h = \lim_{h\to 0+} s_h = \int_0^\infty f(x)\,dx.
ただし, S_h, s_h は dRi の定義中のものである。さらに,
も成立する。
dRi は広義積分可能より強い概念だということですね。
注意ですが,単に広義リーマン積分可能だけでは, \lim_{x\to\infty } f(x) =0 は言えません。たとえば, f(x) = 1_{[n, n+ 1/n^2]} \; (n\ge 1) (定義関数) は広義積分可能ですが, \lim_{x\to\infty } f(x) =0 ではありませんね。特に,この関数は広義積分可能だが dRi でない例でもあります。
証明
s_h \le \int_0^\infty f(x)\,dx \le S_h
はほぼ明らかであるから,前半は明らか。後半についても, \limsup_{x\to\infty} f(x) >0 と仮定すると,定義より常に S_h=\infty となってしまうため,従う。
証明終
Directly Riemann Integrableの例
dRi である関数の例を挙げましょう。このとき,以下の定理は基本的です。
定理(dRi な関数の例)
f\colon [0,\infty)\to [0,\infty) が広義単調減少かつ広義積分可能であれば,dRi である。
これの証明は簡単で,f が単調減少なら, s_h \le \int_0^\infty f(x)\, dx\le S_h について, S_h -s_h = hf(0)\xrightarrow{h\to 0+}0 となるため,従います。
よって例えば,
- f(x) = e^{-x}
- f(x) = \dfrac{1}{x^2+1}
のような関数は dRi ですね。