一様可積分性は,とくに有限測度(μ(X)<∞)のときに有用です。ここでは,一様可積分性の定義と,一様可積分のときに用いることのできる「ヴィタリの収束定理」について解説していきましょう。
一様可積分性
可測関数 f が可積分 (integrable) であるとは,∫∣f∣dμ<∞ が成立することでした。
一様可積分性の定義
定義(一様可積分)
可積分関数列 {fn} が一様可積分 (uniformly integrable) であるとは,
λ→∞limn≥1sup∫{∣fn∣≥λ}∣fn∣dμ=0
が成り立つことを言う。
一様可積分は,特に有限測度(μ(X)<∞)のときに大事な概念であり,確率論でもよく使われます。
一様可積分は,任意の ε>0 に対して,ある δ>0 が存在して,
μ(A)<δ⟹∣∣∫Afndμ∣∣<ε(n≥1)
と定義することもあります。この定義は上の定義より少し緩いです。実際,μ(X)<∞ のとき,以下の同値が知られています。
一様可積分性の同値な定義
定理1(一様可積分性の同値な定義)
μ(X)<∞ であるとき,可測関数列 {fn} に関して以下は同値。
- {fn} は一様可積分
- 上式 (1) かつ n≥1sup∫∣fn∣dμ<∞ が成立。
(1) 式だけでは,元の定義と同値になりません。実際,fn=n1{0} で,μ=δ0 (デルタ測度) とすると,(1) 式は満たしますが,元の定義は満たしません。
証明
1. ⟹ 2.について
λ>0 が十分大きいとき,1.より supn∫{∣fn∣≥λ}∣fn∣dμ<∞ である(左辺を Mλ とする)。
nsup∫∣fn∣dμ≤nsup∫{∣fn∣<λ}∣fn∣dμ+nsup∫{∣fn∣≥λ}∣fn∣dμ≤nsup∫λdμ+Mλ≤λμ(X)+Mλ<∞
より,(2) 式を得る。また,ε>0 に対して,supn∫{fn≥λ}∣fn∣dμ<ε をみたす λ を取ると,μ(A)<ε/λ に対して,
nsup∣∣∫Afndμ∣∣≤nsup∫A∣fn∣dμ≤nsup∫A∩{∣fn∣≥λ}∣fn∣dμ+nsup∫A∩{∣fn∣<λ}∣fn∣dμ≤ε+λμ(A)≤2ε
より,(1) 式を得る。
2. ⟹ 1.について
(2) 式より,M=supn∫∣fn∣dμ<∞ とする。λ>0 に対し,
λμ(∣fn∣≥λ)=λ∫{∣fn∣≥λ}dμ≤∫{∣fn∣≥λ}∣fn∣dμ≤M
より, μ(∣fn∣≥λ)≤M/λ である(マルコフの不等式)。(1) 式より M/λ<δ とすると,特に μ({∣fn∣≥λ}∩{fn≥0})<δ,μ({∣fn∣≥λ}∩{fn<0})<δ であるから,
nsup∫{∣fn∣≥λ}∣fn∣dμ≤nsup∫{∣fn∣≥λ}∩{fn≥0}∣fn∣dμ+nsup∫{∣fn∣≥λ}∩{fn<0}∣fn∣dμ=nsup∣∣∫{∣fn∣≥λ}∩{fn≥0}fndμ∣∣+nsup∣∣∫{∣fn∣≥λ}∩{fn<0}fndμ∣∣≤ε+ε=2ε.
これは,limλ→∞supn∫{∣fn∣≥λ}∩{fn≥0}∣fn∣dμ=0 を意味する。
証明終
ヴィタリの収束定理
定理2(ヴィタリの収束定理; Vitali convergence theorem)
(X,F,μ) を測度空間,μ(X)<∞ とする。{fn} は一様可積分で,fnn→∞f であるとき,f は可積分で,
n→∞lim∫∣fn−f∣dμ=0
である。特に,
n→∞lim∫fndμ=∫fdμ
が言える。
fnn→∞f は μ-a.e. で構いません。
なお,μ(X)<∞ の下で,ヴィタリの収束定理は,ルベーグの収束定理(DCT)より仮定が弱いです。実際,∣fn∣≤F となる可積分関数 F が存在するとすると,
nsup∫∣fn∣≥λ∣fn∣dμ≤∫∣F∣≥λ∣F∣dμλ→∞DCT0
より,{fn} は自動的に一様可積分になりますね。
証明
Fatouの補題と定理1より,∫∣f∣dμ≤liminfn→∞∫∣fn∣dμ≤supn∫∣fn∣dμ<∞ であるから,f は可積分である。
{fn−f} が一様可積分であることは,定理1を考えればわかる。ε>0 とする。λ>0 を十分大きくとることで,supn∫{∣fn−f∣≥λ}∣fn−f∣dμ<ε とする。すると,
∫∣fn−f∣dμ≤∫{∣fn−f∣≥λ}∣fn−f∣dμ+∫{∣fn−f∣<λ}∣fn−f∣dμ≤ε+∫{∣fn−f∣<λ}∣fn−f∣dμ.
ここで,∣fn−f∣1{∣fn−f∣<λ}≤λ であり,右辺は可積分であるから,ルベーグの収束定理(有界収束定理)より,n を十分大きくとると,∫{∣fn−f∣<λ}∣fn−f∣dμ<ε とできる。したがって,十分大きな n に対し,
∫∣fn−f∣dμ≤ε+ε=2ε
であり,これより limn→∞∣fn−f∣dμ=0 を得る。後半は明らか(分からなければルベーグの収束定理の証明の最終行の式を見よ)。
証明終
なお,定理2は逆も知られています。具体的には,{fn},f が可積分で,fnn→∞f かつ limn→∞∫∣fn−f∣dμ=0 ならば,{fn} は一様可積分です。証明は省略します。
関連する記事
参考
- 舟木直久「確率論」(朝倉書店 講座 数学の考え方20, 2004)
- W. Rudin, Real and Complex Analysis, 3rd edition. McGraw-Hill, 1987.