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【位相空間】稠密性と可分性~定義と具体例11個~

集合と位相
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位相空間の部分集合が,稠密(ちゅうみつ)であるとは,閉包が全体集合に一致することを言い,可分であるとは,高々可算な稠密部分集合を持つ位相空間のことを言います。

稠密の定義と可分の定義を,それぞれたくさんの具体例を添えて確認していきましょう。

稠密性(ちゅうみつせい)の定義と具体例3個

まずは稠密性の定義と具体例を述べましょう。

稠密性の定義

定義(稠密)

(X,\mathcal{O})位相空間とし, A\subset X とする。

A X において稠密 (ちゅうみつ, dense) であるとは,

\Large \color{red}\overline{A}=X


が成り立つことを言う。ただし, \overline{A} A閉包を表す。

稠密の「稠」の漢字に注意してください。

稠密の漢字の注意点説明

定義より, A\subset B\subset X A X において稠密なら, B X において稠密です。また, X は明らかに X において稠密です。

稠密性の具体例

稠密の例1(\R).

ユークリッド空間 \R において,有理数全体の集合 \mathbb{Q}\subset \R は稠密である。

\overline{\mathbb{Q}}=\R ですから稠密です。有理数の稠密性には,以下の記事でも解説しています。

上の記事では,稠密性の定義を,「任意の開区間が有理数を含む」としていますが。これはすなわち「無理数の部分集合である開集合は空集合以外存在しない」ということなので, \operatorname{Int}(\R\setminus\mathbb{Q})=\emptyset です。ただし, \operatorname{Int} は集合の内部(開核)を指します。これはすなわち, \overline{\mathbb{Q}}=\R ということです。

稠密の例2(密着位相).

(X,\{ \emptyset, X\})密着空間とする。

このとき,空集合でない全ての部分集合 A\subset X は稠密である。

\overline{A}=X ですから,空集合でない全ての部分集合は稠密になりますね。

稠密の例3(離散位相).

(X, 2^X)離散空間とする。

このとき, X の稠密部分集合は X に限る。

A\subset X に対し,\overline{A}=A ですからね。

可分性の定義と具体例8個

稠密性の定義を理解していれば,可分性の定義も理解できるはずです。

可分性の定義

定義(可分)

(X, \mathcal{O})位相空間とする。この位相空間が高々可算な稠密部分集合を持つとき,この位相空間は可分 (separable)可分空間 (separable space) という。

要するに,可算部分集合 A\subset X が存在して, \overline{A}=X が成り立つとき,可分空間というんですね。可算については,可算集合と非可算集合(可算無限・非可算無限)で解説しています。

可分性の具体例

ここからは,可分空間の具体例を見ていきましょう。

可分の例1(\R).

ユークリッド空間 \R は通常の位相で可分である。

\overline{\mathbb{Q}}=\R であり,有理数全体の集合 \mathbb{Q} は可算集合なので,可分だとすぐ分かりますね。

可分の例2.

X が高々可算集合であるような位相空間 (X,\mathcal{O}) は可分である。

\overline{X}=X であり, X 自体が高々可算なので,可分ですね。

可分の例3(密着位相).

(X, \{\emptyset, X\})密着空間とすると,この空間は可分である。

X の空でない任意の部分集合が稠密になりますから,可分になります。

可分の例4(離散位相).

離散位相空間 (X, 2^X) が可分である必要十分条件は, X が高々可算集合であることである。

稠密の例3でも述べた通り,離散空間では \overline{A}=A なので, X 自身以外に稠密な部分集合はありません。

ここから先は,関数解析でよく使う可分空間の例を挙げます。

可分の例5(連続写像の空間).

C[0,1]=\{ f\colon [0,1]\to\R\mid f\text{ is continuous}\} を,連続写像 f\colon [0,1]\to\R 全体の集合とする。この空間は,

\| f-g\|= \sup_{0\le x\le 1} |f(x)-g(x)|


により,バナッハ空間(よって距離空間,よって位相空間)と思える。この空間は可分である。

\mathbb{Q}[x] を有理数係数多項式全体の集合とすると,これは可算集合であり,C[0,1] の部分集合と見たときに,C[0,1] の位相について \overline{\mathbb{Q}[x]}=C[0,1] となります。これはワイエルシュトラスの多項式近似定理からわかります。よって,可分です。

可分の例6( L^p 空間).

関数空間 L^p(\R^n) 1\le p<\infty のとき可分だが, p=\infty のときは可分でない。

1\le p<\infty のとき可分であることは,台(サポート)コンパクトな連続関数の空間 C_c(\R^n) L^p(\R^n) において稠密であることと,上の例6から従います。

可分の例7( l^p 空間).

数列空間 l^p 1\le p<\infty のとき可分だが, p=\infty のときは可分でない。

1\le p<\infty のとき可分であることは,

l_{c,\mathbb{Q}}=\{ (a_1, \ldots, a_n, 0,\ldots)\mid a_i\in \mathbb{Q}, n\ge 1\}


可算集合であることと,これが l^p で稠密であることから分かります。

可分空間の性質

可分空間の重要な性質をいくつか紹介しておきましょう。

定理(可分空間の性質)

  1. 可分な位相空間開集合は,部分空間として可分である
  2. 第二可算公理をみたす位相空間は可分である
  3. 可分な位相空間連続写像による部分空間として可分である
  4. 距離空間においては,可分であること・第二可算であること・リンデレーフであることは同値である。
  5. 可分空間の高々連続体濃度直積は可分である。

2.について,第二可算ならば可分は成立しますが,逆は成立しないことが知られています。ただし, (X,\mathcal{O}) が距離化可能ならば,4.の通り,同値になります。

1.と3.と5.のみ証明しましょう。

証明

1.について

D\subset X X において稠密であるとき, D\cap A A において稠密であることを示す。

B\subset A A における開集合とする。 A X における開集合なので,相対位相と部分位相空間の定義・具体例5つ・性質5つの定理2.2より, B X における開集合である。よって, D\cap B \ne \emptyset であり,

D\cap B = D\cap (A\cap B)=(D\cap A)\cap B


なので, (D\cap A)\cap B\ne\emptyset となる。ゆえに, D\cap AA において稠密であることが示せた。 D可算集合と思うと, D\cap A も高々可算集合なので,示せた。

3.について

(X,\mathcal{O}_X), (Y, \mathcal{O}_Y) を位相空間, f\colon X\to Y連続とし, X が可分であるとして, f(X)相対位相に関して可分であることを示す。

X が可分なので,可算部分集合 A\subset X で, \overline{A}=X となるものが取れる。 f 連続なので, f(\overline{A})\subset \overline{f(A)} となる(→位相空間における連続写像の定義と性質を詳しく)。したがって, f(X)\subset \overline{f(A)} となるので, f(A)\subset f(X) f(X) において稠密である。 f(A) は高々可算なので, f(X) は可分である。

5.について

\Lambda を高々連続体濃度とし,各 \lambda\in \Lambda に対し, X_\lambda を可分として,直積 \prod_{\lambda\in\Lambda}X_\lambda が可分であることを示そう。 \Lambda は高々連続体濃度なので,\Lambda\subset [0,1] とみなせる。 \{ x_{\lambda, n}\}_n\subset X_\lambda可算な稠密部分集合とする。

k\ge 1 に対し, J_1, J_2, \ldots, J_k \subset [0,1] を,端点が有理数である,どの2つも共通部分をもたない閉区間とする。さらに, n_1, n_2, \ldots, n_k\ge 1 とする。このとき, p=p(J_1, \ldots, J_k; n_1, \ldots, n_k)\in X

p_\lambda =\begin{cases} x_{\lambda, n_i} & \lambda\in J_i\cap\Lambda, \\ x_{\lambda, 1}& \text{otherwise} \end{cases}


と定める。ただし, \pi_\lambda\colon X\ni p\mapsto p_\lambda \in X_\lambda は自然な射影である。 k, J_1, \ldots, J_k, n_1, \ldots, n_k を動かして得られる p(J_1, \ldots, J_k; n_1, \ldots, n_k) たち全体の集合を P\subset X とすると,P は明らかに可算である。これが稠密部分集合であることを示そう。 X開基は, m\ge 1 とし, U_{\lambda_i}\subset X_{\lambda_i} を開集合とすることで,

U= \pi^{-1}_{\lambda_1} (U_{\lambda_1})\cap\cdots\cap \pi^{-1}_{\lambda_m} (U_{\lambda_m})


の形でかける。 x_{\lambda_i, n_i} \in U_{\lambda_i} となる n_i を取ってきて,さらに端点が有理数である,どの2つも共通部分をもたない閉区間 J_1, J_2,\ldots, J_m を, \lambda_i\in J_i となるようにとってくると, p(J_1, \ldots, J_k; n_1, \ldots, n_k)\in U である。よって, P が稠密であることが示された。

証明終

なお1.について,一般に可分な空間の部分空間が可分であるとは言えません。これについては,非可算集合 X とある1点 x\in X に対し,開集合系 \mathcal{O}

\mathcal{O}=\{\emptyset\}\cup \{ O\subset X \mid x\in O\}


で定めた位相空間 (X, \mathcal{O}) が良い例です。この位相は特定点位相 (particular point topology) といいます。この空間は, \overline{\{x\}} =X なので可分ですが,部分空間 X\setminus \{x\} は非可算な離散空間なので,可分ではありません。特定点位相は以下でも解説しています。

また,他にも有名な例として,ゾルゲンフライ平面 \R^2 とその部分空間 \Delta= \{ (x,-x)\mid x\in \R\} があげられます。ゾルゲンフライ平面とは,

\{ [a,b)\times [c,d) \mid a,b,c,d\in\R\}


開基とする位相空間 \R^2 のことです。この位相空間は可分ですが,部分空間 \Delta離散空間となり,集合として非可算集合なので,可分ではありません。ゾルゲンフライ平面については,以下の記事で詳しく解説しています。

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