関数項級数の一様収束を判定する最も基本的な方法である,ワイエルシュトラスのM判定法(優級数定理ともいう)について紹介し,証明・例示します。
ワイエルシュトラスのM判定法
定理(ワイエルシュトラスのM判定法; Weierstrass M-test)
集合 A 上の実数値または複素数値の関数列 \{f_n\} に対し,ある数列 \{M_n\} が存在して, |f_n(x)| \le M_n \,\,(x \in I) かつ \sum_{n=1}^\infty M_n < \infty ならば,
\sum_{n=1}^\infty f_n(x)は I 上絶対一様収束(絶対収束かつ一様収束)する
x \in A によらず,常に |f_n(x)| \le M_n と上から抑えられることがポイントです。
なお,集合 A は有界でなくても構いません。任意の x \in I について |f_n(x)| \le M_n が成り立つようなものであれば何でもよいです。
ワイエルシュトラスのM判定法は,級数の収束を議論する,比較判定法の関数項バージョンだといえるでしょう。比較判定法については,以下の記事を参照してください。
ワイエルシュトラスのM判定法の証明
定理の証明を簡単に行っておきましょう。
証明
以下では, x \in A とする。
\sum_{k=m}^n |f_k(x)| \le \sum_{k=m}^n M_kと, x に依らないもので評価でき,コーシー列の性質より
\sum_{k=m}^n M_k \xrightarrow{m,n \to\infty} 0であるから, \{\sum_{k=1}^n |f_k(x)| \}_n は一様コーシー列である。よってこれは一様収束する。すなわち, \sum_{k=1}^\infty f_k(x) は絶対一様収束する。
証明終
具体例
例1.
\textcolor{red}{f_n(x) = \sin nx / 2^n } とする。このとき,
\begin{aligned} \left| \frac{\sin nx }{2^n} \right| \le \frac{1}{2^n}, \quad x \in \mathbb{R} \end{aligned}かつ \sum_{n=1}^\infty 1/2^n = 1 < \infty より,ワイエルシュトラスのM判定法から,
\textcolor{red}{\sum_{n=1}^\infty \frac{\sin nx}{2^n}}は \mathbb{R} 上絶対一様収束(絶対収束かつ一様収束)する
\mathbb{R} 上全体で絶対一様収束するのがわかりますね。
例2.
\textcolor{red}{f_n(x) = x^n /\log (n+1) }, \,\, 0 < a < 1 とする。このとき,
\begin{aligned} \left| \frac{x^n }{\log (n+1)} \right| \le \frac{a^n}{\log 2}, \quad x \in [-a, a] \end{aligned}かつ \sum_{n=1}^\infty a^n = a/(1-a) < \infty より,ワイエルシュトラスのM判定法から,
\textcolor{red}{\sum_{n=1}^\infty \frac{x^n}{\log( n+1)}}は [-a, a] 上絶対一様収束(絶対収束かつ一様収束)する
[-a, a] 上 (0 < a < 1) であることに注意してください。 たとえば, [-1, 1] や (-1, 1) の上では一様収束しません。
ただし, (-1, 1) の上では広義一様収束します。