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定義・公理・定理・命題・補題・系を完全理解しよう

記号・記法
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数学でよく出てくる「定義・公理・定理・命題・補題・系」について,何を表しているか,それらの違いを解説します。

これらを正しく理解しておくことは,数学を学ぶ上で必須ですので,完全理解を目指しましょう。

なお,これは一般的な専門数学における用語解説であり,他の文脈では意味が変わることがあります。

定義とは

定義 (Definition) とは
  • ある”ことがら”に対して,”名前”を付けることである。
  • ある”ことがら”と”名前”を対応付けることである。

定義とは,辞書を作るのようなものです。辞書は,ある「もの」や「こと」に対して,名前が定められています。定義とはそういう「言葉」の意味を定めるものです。

具体例を挙げてみましょう。

「定義」の例

  1. 2で割れる整数を偶数,割れない整数を奇数という。
  2. 2辺の長さが等しい三角形を二等辺三角形という。
  3. ある点に対して,その点から等距離にある点の集まりをという。

ある「ことがら」に対して,それに名前を付けていますね。

なお,本サイトで定義を記すときは,一貫して緑のboxを用いています。

公理とは

公理 (Axiom) とは
  • ある”性質”をあらかじめ(証明なしに)正しいと仮定してしまうことである。
  • 論理を展開するうえでの”前提”を定めることである。

公理とは,性質の決まりごとです。これは,「なぜそうなるの」とか「証明して」と聞くのは NG で,「そういうもの」として定めたものです。

具体例を挙げましょう。

「公理」の例

  1. 異なる2点を通る直線はただ一つ存在する。
  2. 並行でない2直線はただ1点のみで交わる。
  3. 集合 A ,B が全く同じ要素を持てば,同じ集合である。

最初の2つは「ユークリッド幾何学」によるもので,最後は「公理的集合論」によるものです。多くの数学では,これらを無意識に仮定しているでしょう。

公理は正しいかどうか証明されませんから,別の”前提”を公理とすることもできます。
公理(すなわち前提)を変えると,全く別の世界が広がっていることだってあります。非ユークリッド幾何学がその一例です。

定理・命題・補題・系とは

命題とは

命題 (Proposition) とは
  • 定義や公理を用いて,論理的な”証明”によって導かれる”性質”や”事実”のことである
  • 論理的な”証明”によって,真(正しい)か偽(間違っている)かが明確に分かる”主張”のことである。

命題とは,真偽が論理的に明確にわかるものです。ここでいう「論理的」とは,公理という「前提」の上で成り立つものです。
そういう点で,公理は真と認めているわけですから,公理も命題の一つと言えます。公理は「証明する必要のない命題」です。

また,「命題」は,他の命題を用いて示しても構いません。他の命題も,結局論理的な証明によって言えたものであるからです。

「命題」の例

  1. いま東京に住んでいる人は,いま日本に住んでいる。
  2. 偶数と偶数の和は偶数である。
  3. 二等辺三角形の2つの底角の大きさは等しい。

どれも真ですね。基本的に,教科書や論文などで単に「命題」といったときには,それは”真”である主張を意味します。もちろん,偽であるものを「命題」ということもあります。

定理・補題・系とは

定理 (Theorem)・補題 (Lemma)・系 (Corollary) とは
  • 命題のうち,特に重要なものを「定理」という。
  • 命題のうち,特にそれ自体の重要度は低く,別の定理や命題を支えるために”補助的に”あるものを「補題」という。
  • 命題のうち,他の定理(や命題)から簡単な証明で明らかに導かれる”当然の結果”をその定理(または命題)の「系」という。

定理・補題・系は全て「命題」の一種で,重要度が違うだけです。「重要度」とは実社会や数学にインパクトを与えるもの,他の定理に応用が利くもの,証明が難しいもの等を指します。

重要度をまとめてみると,

定理 > 命題 > 補題 > 系

となります。
※ 「系」は定理・命題に付随するため,付随する定理・命題によっては非常に重要なものである場合があります。
ここでいう「命題」とは,定理・補題・系と呼ばれない「残りもの」を意味します。

実際のところ,重要度とは非常に主観的なものです。ある論文では主結果であるため「定理」であっても,他の論文であれば「補題」になってしまうことだってあります。

数学ではさまざまな「命題」を扱うので,重要度が分かった方が都合が良いです。そのため,このようになっているんですね。

有名な例を少しだけ挙げておきます。

「定理」の例

  1. 三平方の定理
  2. 円周角の定理
  3. 正弦定理・余弦定理

「補題」の例

  1. ツォルンの補題

「定理」の例は高校数学ではお馴染みのものでしょう。
「補題」については,大学数学におけるツォルン (Zorn) の補題が有名ですが,有名であるとはすなわち「重要である」ということであり,あくまで伝統的に「補題」と呼んでいるだけです。

なお,本サイトで命題・定理・補題・系を記すときは,一貫して青のboxを用いています。

まとめ

最後に要旨をまとめておきましょう。

Check~定義・公理・定理・命題・補題・系の違い~
  • 定義とは,ある物事に対して名前を付けることである。
  • 公理とは,証明せずに認める”前提”的な性質である。
  • 命題とは,真偽が論理的にはっきりと定まる主張である。
  • 定理とは,命題の一種で,特に重要度の高いものを指す。
  • 補題とは,命題の一種で,それ自身の重要度は低く,他の定理や命題をサポートするものを指す。
  • とは,命題の一種で,他の定理・命題から簡単に従うものを指す。

数学を学ぶ上でこれら,特に定義・公理・定理の区別は必ず明確にせねばなりません。何が何だか分からないまま数学を学習しても,理解したとは言えないでしょう。
この記事が多くの方の参考になれば幸いです。