PR

第二可算公理と第二可算な位相空間の例・性質

集合と位相
記事内に広告が含まれています。

ある位相空間が第二可算公理をみたす,あるいは第二可算な位相空間とは,高々可算個からなる開基をもつことを言います。すなわち,可算個の集合の集まりから,開集合族が作れるような空間のことです。「可算性」があると,位相空間としては扱いやすいことが多く,人間の直感も通用しやすいです。

第二可算公理について定義を述べ,具体例と良い性質を紹介しましょう。

第二可算公理

第二可算のイメージ図

定義(第二可算)

(X,\mathcal{O})位相空間とする。 X が高々可算個からなる開基をもつとき, X第二可算 (second countable) または第二可算公理をみたす (second axiom of countability) という。

\mathcal{B} が開基 (open base) であるとは,任意の開集合 O\in\mathcal{O} に対し,ある \mathcal{B}_0\subset \mathcal{B} が存在して,

O=\bigcup_{B\in\mathcal{B}_0} B


となることをいいます(→開基・準開基と位相の生成について詳しく)。すなわち第二可算とは,あらかじめ選ばれた可算個の開集合があって,全ての開集合がそのあらかじめ選ばれたもののうちの,いくつかの和集合でかけることをいいます。「可算個」がポイントです。

第二可算ならば,開集合 \mathcal{O}濃度は高々連続体濃度です。なぜなら,\mathcal{O}濃度\mathcal{B}_0\subset \mathcal{B} となる \mathcal{B}_0 の取り方の濃度,すなわちべき集合 2^\mathcal{B}濃度以下でなければならないからです。

第二可算ならば第一可算です。第一可算の定義も確認しておきましょう。

第一可算

(X,\mathcal{O})位相空間とする。各 x\in X が高々可算個からなる基本近傍系をもつとき, X第一可算 (first countable) または第一可算公理をみたす (first axiom of countability) という。

第二可算の定義に現れる開基の概念は開集合全体を記述する概念で,第一可算の定義に現れる基本近傍系の概念は各点の開近傍を記述する概念です。

\mathcal{B}可算開基とすると, x\in X に対し,

\mathcal{B}_x= \{ B\in \mathcal{B}\mid x\in B\}


は,高々可算 x 基本近傍系です。ゆえに,第二可算なら第一可算であることが示せました。

ゆえに,第二可算な空間は,第一可算な空間の性質もみたすことが分かります。

第二可算な空間の例とそうでない例

例1( \R).

\R は第二可算である。実際,

開区間 (p, q)\; (p, q\in\mathbb{Q}) (q-1/n, q+1/n)\; (q\in\mathbb{Q}, n\ge 1)可算開基である。

ユークリッド空間における開集合が分かっていれば分かるでしょう。より一般に, \R^n も第二可算です。

例2(密着位相).

密着空間 (X, \{\emptyset, X\}) は第二可算である。実際,\{X\}開基である。

明らかですね。

例3(離散位相).

離散空間 (X, 2^X) が第二可算である必要十分条件は, X可算集合であることである。

また,離散空間は常に第一可算なので, X非可算のときは第一可算だが第二可算でない例になっている。

1点集合の集まり \bigl\{ \{x\}\mid x\in X\bigr\} X開基であり,これ以上濃度の小さい開基はないからです。一方で, \{x\} x\in X における基本近傍系なので,離散空間は常に第一可算です。

第二可算なら第一可算・可分リンデレーフです。ここからは,第二可算でないが第一可算,みたいな微妙なやつを一覧にしてまとめておきます。各具体例はリンク先を見てください。初学者においては,ここまで詳しい例は知らなくても大丈夫です。

第二可算第一可算可分リンデレーフ
非可算集合上の特定点位相××
非可算集合上の除外点位相××〇(コンパクト)
非可算集合上の補有限位相××〇(コンパクト)
非可算集合上の補可算位相×××
ゾルゲンフライ直線(下限位相)×
ゾルゲンフライ平面××
長い直線×××

このようなさまざまな空間の例は,以下の記事に集約しています。

第二可算な空間の性質

先ほど示したように,第二可算ならば第一可算なので,第一可算の性質も成立しますが,ここではそれ以外の性質について紹介しましょう。

定理1(第二可算な空間の性質)

  1. 第二可算な空間の部分空間は第二可算である
  2. 第二可算な空間の連続開写像によるは第二可算である
  3. 第二可算な空間の可算個の直積は第二可算であるが,非可算個の直積はそうとは限らない
  4. 第二可算ならば可分である
  5. 第二可算ならばリンデレーフである

可分とは,可算稠密部分集合をもつことです。リンデレーフとは,任意の開被覆が可算部分被覆をもつことをいいます。定理の証明には選択公理が必要です。

以下で, (X,\mathcal{O}) を第二可算な位相空間とし,\mathcal{B}可算開基としましょう。

証明

1.について

A\subset X とすると,\mathcal{B}_A=\{B\cap A\mid B\in\mathcal{B}\} は, A の高々可算開基である。よって示せた。

2.について

(X, \mathcal{O}_X), (Y, \mathcal{O}_Y)位相空間とし,f\colon X\to Y全射連続開写像とする。\mathcal{B}_X X開基としたときに, f(\mathcal{B}_X)=\{ f(B)\mid B\in \mathcal{B}_X\} Y開基であることを示せばよい。

f開写像なので, B\in\mathcal{B}_X に対し, f(B) は開集合である。 V\in\mathcal{O}_Y とする。 f 連続なので, f^{-1}(V)\in\mathcal{O}_X である。よって,ある \mathcal{B}_o\subset \mathcal{B} が存在して,

f^{-1}(V)=\bigcup_{B\in\mathcal{B}_0} B


である。 f(\bigcup_{B\in\mathcal{B}_0} B )=\bigcup_{B\in\mathcal{B}_0} f(B) であり,また f全射なので f\circ f^{-1}(V)=V である(→写像の像・逆像と集合との演算証明)から,

V=\bigcup_{B\in\mathcal{B}_0} f(B)


ゆえに, f(\mathcal{B}_X)Y開基である。

3.について

n\ge 1 に対し, (X_n, \mathcal{O}_n) を第二可算な位相空間とし,\mathcal{B}_n可算開基とする。このとき,直積 X=\prod_{n}^\infty X_n開基は, k\ge 1,\, n_1,\ldots, n_k\ge 1,\, B_{n_1}\in\mathcal{B}_{n_1},\ldots, B_{n_k}\in \mathcal{B}_{n_k} を用いて,

B_{n_1}\times \cdots \times B_{n_k} \times \prod_{n\ne n_1, \ldots, n_k} X_n


の形にかける集合全体で,このような集合全体は可算個なので, X も第二可算である。

一方で,たとえば,第二可算な空間 I=[0,1]非可算個の直積 I^I は第一可算ですらない(→I^I の位相的性質~コンパクトだが点列コンパクトでない例~)から,第二可算でない。

4.について

\mathcal{B}可算開基より, \mathcal{B}=\{B_n\}_n とする。各 B_n に対し,一つずつ s_n\in B_n を選んだ集合 S=\{s_n\} を考える。これが稠密であることを示せばよい。

x\in X を任意に選ぶ。また,その任意の開近傍 x\in U をとる。\{B_n\}開基より,ある n が存在して, x\in B_n\subset U とできる。 s_n\in B_n\subset U より, S\cap U\ne \emptyset である。ゆえに, \overline{S}=X すなわち S稠密である。

5.について

\mathcal{C} を開被覆とする。任意の C \in\mathcal{C} x\in C に対し,開基の定義より,ある B_{C, x} \in \mathcal{B} が存在して, x\in B_{C, x} \subset C とできる。

\mathcal{B}'=\{ B_{C, x} \in\mathcal{B}\mid C\in\mathcal{C}, \, x\in C\}


とする。 \mathcal{B}'\subset \mathcal{B} より, \mathcal{B}' は高々可算集合である。ゆえに,

\mathcal{B}'=\{ B_{C_1, x_1}, B_{C_2, x_2}, \ldots\}


と番号付けできる。このときの C_1, C_2, \ldots は, \mathcal{C}可算部分被覆になっているから, Xリンデレーフである。

証明終

距離空間における第二可算

定理2(距離空間における第二可算)

(X, d)距離空間とする。このとき,以下は同値である。

  1. X は第二可算
  2. X可分
  3. Xリンデレーフ

定理1ですでに1.\implies 2.と1.\implies 3.を示しているので,2.\implies 1.と3.\implies 1.のみ示せばよいです。以下で, \varepsilon >0 に対し, a\in X\varepsilon-近傍を

B_\varepsilon(a)=\{x\in X\mid d(a,x)<\varepsilon\}


とかくことにします。

証明

2.\implies 1.について

X可分とすると,可算集合 \{x_n\}\subset X稠密とできる。このとき,\mathcal{B}= \{B_{1/m}(x_n)\}_{m, n}開基であることを示そう。

x\in X とし, x\in U x開近傍とする。距離空間における開集合の性質より,ある m\ge 1 が存在して, x\in B_{1/m}(x)\subset U とできる。

また, \{x_n\}稠密なので,ある n\ge 1 が存在して, x_n\in B_{1/(2m)}(x) ( x\in B_{1/(2m)}(x_n))とできる。三角不等式により,

x\in B_{\frac{1}{2m}}(x_n)\subset U


となるから,\mathcal{B}開基であることが示せた。以上から,\mathcal{B}可算開基なので, X は第二可算である。

3.\implies 1.について

Xリンデレーフとする。各 m\ge 1 に対し, \{B_{1/m}(x)\mid x\in X\} を考えると,これは X の開被覆であるから,仮定よりある x_{m, 1},x_{m, 2},\ldots が存在して, \{B_{1/m}(x_n)\}_{n} X可算部分被覆であるようにできる。

このとき,\mathcal{B}= \{B_{1/m}(x_n)\}_{m, n}開基であることは,上の証明の緑字の部分を「\{B_{1/(2m)}(x_n)\}_n X を被覆するので,」に変えると同様である。

証明終

大事な性質なので,知っておきましょう。

関連する記事

参考

  1. S. Willard, General Topology, Dover Publications, 2004.