べき級数における項別積分・項別微分

微分積分学(大学)
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項別積分とは,「無限和の積分は,積分の無限和と等しい」という定理で,項別微分とは,「無限和の微分は,微分の無限和と等しい」という定理です。項別積分は無限和と積分の交換定理で,項別微分は無限和と微分の交換定理です。もっと言うと,無限和は有限和の極限,微分は差分の極限の形でかけるので,項別積分は極限と積分の交換定理で,項別微分は極限と極限の交換定理です。

これについて,証明と具体例を紹介しましょう。

べき級数における項別積分・項別微分

項別積分・項別微分の図

定理1(べき級数における項別積分・項別微分)

べき級数 \displaystyle f(x)=\sum_{n=0}^\infty a_nx^n 収束半径 r>0 とする。このとき,

  1. (項別積分) |x|<r に対して,
    \color{red}\large \int_0^x f(t)\, dt = \sum_{n=0}^\infty \frac{a_n}{n+1}x^{n+1}
  2. (項別微分) |x|<r に対して,
    \color{red}\large f'(x)=\sum_{n=1}^\infty na_n x^{n-1}

が成り立つ。また,1,2.における右辺の収束半径も r である。

定理1は複素関数 x\in \mathbb{C} でもそのまま成立します。ただし,1.における積分経路は 0 から x までで,原点中心,半径 r となる開円板内にある滑らかな曲線とします。

1.はより一般に, [a,b]\subset (-r, r) に対し,

\int_a^b f(t)\, dt = \sum_{n=0}^\infty\frac{a_n}{n+1} (b^{n+1} -a^{n+1})


が成り立ちます(複素数の場合は原点中心,半径 r の開円板内における, a から b までの滑らかな経路における線積分と考える)。

一番初めに述べた通り,項別積分は無限和と積分の交換定理で,項別微分は無限和と微分の交換定理であることを確認しておきましょう。まず項別積分については,

\begin{aligned} \int_0^x f(t)\, dt &= \int_0^x \sum_{n=0}^\infty a_n t^n \, dt \\ &\stackrel{!}{=} \sum_{n=0}^\infty \int_0^x a_n t^n \, dt \\ &=\sum_{n=0}^\infty \frac{a_n}{n+1}x^{n+1} \end{aligned}


であり,! のついているところで積分と無限和を交換していますね。この部分の式変形が非自明なので,ここを証明せねばなりません。同じく,項別微分については

\begin{aligned}f'(x)&= \left( \sum_{n=0}^\infty a_nx^n\right)' \\ &\stackrel{!}{=} \sum_{n=0}^\infty (a_nx^n)' \\&=\sum_{n=1}^\infty na_n x^{n+1}\end{aligned}


であり,! のついているところで微分と無限和を交換していますね。ここが非自明なので,ここを証明せねばなりません。

2.は帰納的に用いることで,べき級数展開できる関数は,無限回微分可能であることを示しています。

項別積分の証明

収束半径が r>0 であるとき, [a,b]\subset (-r, r) に対し, M=\max\{ |a|, |b|\} としましょう。このとき, t\in [a,b] に対し,

\sum_{n=0}^\infty |a_n t^n|\le \sum_{n=0}^\infty |a_n M^n|<\infty


ですから,ワイエルシュトラスのM判定法(優級数定理)とは~証明と具体例~により, f(t)=\sum_{n=0}^\infty a_n t^n=\lim_{N\to \infty}\sum_{n=0}^N a_n t^n一様収束します(複素数の場合は原点中心,半径 r の開円板内における, a から b までの滑らかな経路において,原点との距離が最も遠い点までの距離を M とすると同様)。したがって,次の定理2が証明できれば良いです。

定理2(一様収束と極限と積分の交換定理)

-\infty<a<b<\infty とする。

\{f_N\} [a,b] 上連続関数列でかつ f 一様収束しているとする。このとき,

\lim_{N\to\infty} \int_a^b f_N(x)\,dx = \int_a^bf(x)\,dx.

定理2において, [a,b]\subset (-r, r) とし, f_N(x)=\sum_{n=0}^N a_n x^n とすれば定理1の1.に帰着します。ただし,左辺と右辺が定理1の1.とは逆ですので注意してください。

定理2の証明

一様収束性より,

\begin{aligned}&\left| \int_a^b f_N(x)\,dx-\int_a^bf(x)\,dx \right| \\& \le \int_a^b |f_N(x)-f(x)|\, dx \\ &\le (b-a)\sup_{a\le x\le b} |f_N(x)-f(x)|\xrightarrow{N\to\infty} 0 \end{aligned}


より,示せた。

証明終

複素数の場合もほぼ同じです。

なお,極限と積分の交換定理は,もっと様々なバージョンが知られています。以下でまとめています。

項別微分の証明

ここでは,項別微分の証明を,項別積分を用いて行うことにしましょう。

項別微分の証明

|x|<r とする。 \sum_{n=1}^\infty na_n x^{n-1} の収束半径が r であることは,次の項目で示すことにして,今これを認めると,定理2の直前に述べた議論により,べき級数 \sum_{n=1}^\infty na_n t^{n-1} [0,x]一様収束する。

よって項別積分できて,

\int_0^x \sum_{n=1}^\infty na_n t^{n-1} \, dt= \sum_{n=1}^\infty\int_0^x na_n t^{n-1} \, dt


すなわち,

\int_0^x \sum_{n=1}^\infty na_n t^{n-1} \, dt= \sum_{n=1}^\infty a_n x^n


両辺 x で微分すると,

\sum_{n=1}^\infty na_n x^{n-1} = \left( \sum_{n=1}^\infty a_n x^n \right)'


を得る。右辺は \left( \sum_{n=0}^\infty a_n x^n \right)' と同じであるから,結論を得る。

証明終

なお,より一般に区間 I に対し,

  • 関数列 \{f_N\} はある1点 x_0\in I で収束
  • f_N C^1
  • \{f_N'\} I 上一様収束

であれば,極限 \lim_{N\to\infty} f_N C^1で,

\left(\lim_{N\to\infty} f_N(x)\right)'=\lim_{N\to\infty} f_N'(x)


であることが示せます。証明は上と類似していますが,無限和の部分は極限に書き換えて(すなわち \sum na_n t^n \sum f'_N(t) に), \int_0^x の代わりに \int_{x_0}^x としてください。

収束半径についての証明

最後に, \displaystyle\sum_{n=0}^\infty a_nx^n\displaystyle \sum_{n=0}^\infty \frac{a_n}{n+1}x^{n+1}\displaystyle \sum_{n=1}^\infty na_n x^{n-1}収束半径が同じことを示しましょう。ここでは,コーシーアダマールの公式を使いましょう。

コーシーアダマールの公式

べき級数 \displaystyle \sum_{n=0}^\infty a_n x^n に対して,

r = \frac{1}{\displaystyle\limsup_{n\to\infty}\sqrt[n]{|a_n|}}


とすると, r は収束半径である。ただし, 1/\infty = 0, \,1/0 =\infty と解釈する。

コーシーアダマールの公式を使えば,必ず収束半径を求めることができます。

収束半径が同じことの証明

\begin{aligned} \limsup_{n\to\infty}\sqrt[n]{|n a_n|}&= \limsup_{n\to\infty} n^{\frac{1}{n}} \sqrt[n]{|a_n|} \\ &= \limsup_{n\to\infty} \sqrt[n]{|a_n|} \\ &= \limsup_{n\to\infty}\frac{1}{(n+1)^{\frac{1}{n}}} \sqrt[n]{|a_n|} \\ &=\limsup_{n\to\infty}\sqrt[n]{\left|\frac{a_n}{n+1}\right|} \end{aligned}


より,示せた。

証明終

項別微分・項別積分の具体例

いくつか具体例を挙げましょう。

例1(logのマクローリン展開).

|x|<1 のとき,等比級数の和の公式より,

\frac{1}{1+x}=1-x+x^2-x^3+x^4-\cdots


が成り立つ。右辺の収束半径は 1 なので, |x|<1 の範囲で項別積分できて,

\log (1+x)= x-\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{3}-\frac{x^4}{4}+\frac{x^5}{5}-\cdots


が成り立つ。これは, \log(1+x)マクローリン展開である(log(1+x)の0でのテイラー展開(マクローリン展開))。

これは, \log(1+x)マクローリン展開の証明にもなっています。

例2(三角関数の微分・積分).

\sin x ,\cos xマクローリン展開

\begin{aligned}\sin x &= \sum_{n=0}^\infty \frac{(-1)^n x^{2n+1}}{(2n+1)!} \\ \cos x&= \sum_{n=0}^\infty \frac{(-1)^n x^{2n}}{(2n)!}\end{aligned}


の右辺の収束半径は \infty である。このマクローリン展開を認めると,任意の x\in\mathbb{C} に対し,項別微分ができて,

\begin{aligned}(\sin x)' &= \sum_{n=0}^\infty \frac{(-1)^n x^{2n}}{(2n)!} \\ (\cos x)'&= \sum_{n=1}^\infty \frac{(-1)^n x^{2n-1}}{(2n-1)!}\\&= -\sum_{n=0}^\infty \frac{(-1)^n x^{2n+1}}{(2n+1)!}\end{aligned}


したがって, (\sin x)'=\cos x,\, (\cos x)'=-\sin x が得られる。

複素数の \sin z, \, \cos zマクローリン展開を定義にすることも多いので,この議論による微分の証明は普通です。また,関連して以下の記事を紹介します。

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