リューヴィルの定理 (リウヴィルの定理, リュウビルの定理,Liouville’s theorem) とは,複素平面全体で正則な関数(整関数という)が有界ならば定数関数に限るという定理です。複素関数論の強力な定理の一つで,これを利用すれば,代数学の基本定理を簡単に示すこともできます。
リューヴィルの定理について,その証明をしましょう。
リューヴィルの定理とその証明

\mathbb{C} 全体を定義域とする正則関数のことを整関数 (entire function) といいます。このことを踏まえると,リューヴィルの定理は非常に短い定理になります。
リューヴィルの定理 (Liouville’s theorem)
有界な整関数は定数関数に限る。
すなわち, f\colon \mathbb{C}\to \mathbb{C} を有界な正則関数とするとき, f は定数関数である。
実関数では,これは成り立ちません。例えば f(x) = \sin x は実数全体で微分可能かつ |\sin x| \le 1 ですが,定数関数ではありません。
しかし複素関数においては,全平面で微分可能(正則)でかつ有界であるような関数は,定数関数しかあり得ないのです。複素関数の正則性がいかに強い条件であるかがよく分かりますね。ちなみに,f(z)=\sin z も非有界です。
証明はコーシーの積分公式を使います。復習しておきましょう。
この証明は以下の記事で解説しています。

リューヴィルの定理の証明
f は有界であるから, |f|<M となる M>0 を取る。
z \in \mathbb{C} に対し, f'(z) = 0 となることを示せばよい。 R > 0 を任意にとり, z を中心とする半径 R の反時計回りの円周を C_R とする。このとき,コーシーの積分公式より,
f'(z) = \frac{1}{2\pi i} \oint_{C_R} \frac{f(\zeta)}{(\zeta-z)^2} \,d\zetaが成り立つ。この両辺の絶対値を取ることで,
\begin{aligned} |f'(z)| &\le \frac{1}{2\pi} \oint_{C_R} \left|\frac{f(\zeta)}{(\zeta-z)^2} \right|\,|d\zeta| \\ &\le \frac{1}{2\pi} \oint_{C_R} \frac{M}{R^2}\,|d\zeta| \\ &= \frac{M}{R} \xrightarrow{R\to\infty} 0 \end{aligned}となって, f'=0 が言えたから, f は定数である。
証明終
リューヴィルの定理の一般化
さらにリューヴィルの定理の結論を定数関数から多項式に一般化しておきましょう。
リューヴィルの定理の一般化
n\ge 0 を整数とする。 f\colon \mathbb{C}\to\mathbb{C} が正則(すなわち整関数)かつ
\lim_{r\to\infty}\frac{\max_{|z|\le r}|f(z)|}{r^{n+1}}=0をみたすとき, f は高々 n 次の多項式である。
リューヴィルの定理の一般化の証明
f は原点中心で \mathbb{C} 全体でべき級数展開可能(→正則関数のテイラー展開(べき級数展開)可能性とその証明)なので, f^{(n+m+1)}(0)=0\; (m=0,1,2,\ldots) を示せばよい。
R > 0 を任意にとり,原点を中心とする半径 R の反時計回りの円周を C_R とする。このとき,コーシーの積分公式より,
\begin{aligned}f^{(n+m+1)}(0) &= \frac{(n+m+1)!}{2\pi i} \oint_{C_R} \frac{f(\zeta)}{\zeta^{n+m+2}} \, d\zeta\end{aligned}であり,両辺絶対値を取ると,
\begin{aligned}&|f^{(n+m+1)}(0)|\\ &=\frac{(n+m+1)!}{2\pi} \oint_{C_R} \left|\frac{f(\zeta)}{\zeta^{n+m+2}}\right| \, |d\zeta| \\ &\le \frac{(n+m+1)!}{2\pi}\frac{\max_{|z|\le R}|f(z)|}{R^{n+m+2}} \oint_{C_R} \, |d\zeta| \\ &=(n+1)!\frac{\max_{|z|\le R}|f(z)|}{R^{n+m+1}}\xrightarrow{R\to\infty}0 \end{aligned}となって, f^{(n+m+1)}(0)=0\; (m=0,1,2,\ldots) が言えたから, f は高々 n 次の多項式である。
証明終
微分が積分でかけるというコーシーの積分公式を利用した証明でした。
非有界な整関数は高々1点以外の全ての値を取る
証明はしませんが,さらに強力な定理を一つ紹介しておきましょう。
ピカールの小定理 (Picard’s little theorem)
定数でない整関数の値域は, \mathbb{C} 全体か,または \mathbb{C} から1点を除いた集合となる。
先ほど「有界ならば定数関数」を証明しましたが,この定理を用いれば,より強く「2点以上取らない値があれば定数関数」が言えるわけです。これはすごいですね。
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