正則関数のテイラー展開(べき級数展開)可能性とその証明

複素関数論
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正則関数は,定義域に含まれる任意の開円板上で常にテイラー展開(べき級数展開)可能です。これは実関数にない大変強力な性質で,正則関数なら,ある1点の値とそのn階微分の値から,開円板上の全ての値が決まるということです。このことを,コーシーの積分公式を用いて証明しましょう。

正則関数のテイラー展開(べき級数展開)

実関数においては, n 回微分可能でも, n+1 回微分可能とは限りません。無限回微分可能でも,解析的(テイラー展開可能)とは限りません(→テイラー展開・マクローリン展開とは【解析的な関数と具体例】)。しかし,複素関数では,1回微分可能なら無限回微分可能だし,さらに解析的(テイラー展開可能)であることが言えます。

1回微分可能なら無限回微分可能であることは,コーシーの積分公式と正則関数は無限回微分可能な証明で解説していますが,ここではこれを認めて,さらに解析的(テイラー展開可能)であることを証明しましょう。

以下で, z_0 \in\mathbb{C} 中心,半径 r>0 の開円板を

\large \textcolor{red}{D_r(z_0)}= \{ z\in\mathbb{C}\mid |z-z_0|<r\}

で表し,その境界である円周を

\large\textcolor{red}{ C_r(z_0)}=\{ z\in\mathbb{C}\mid |z-z_0| =r\}

と表します。ただし,円周の向きは反時計回りとします。

定理(正則関数はテイラー展開可能)

D\subset \mathbb{C}開集合とし,f\colon D\to \mathbb{C}正則関数とする。

このとき,任意の点 z_0 \in D と, D_R(z_0)\subset D となる任意の R>0 に対して,

f(z) = \sum_{n=0}^\infty \frac{f^{(n)}(z_0)}{n!} (z-z_0)^n, \quad z\in D_R(z_0)

となる。この級数は広義絶対一様収束 D_R(z_0) 上の任意のコンパクト集合で絶対一様収束)である。

D_R(z_0)\subset D をみたす任意の R>0 で,上の等式が言えます。よって,たとえば \mathbb{C} 全体で正則関数(整関数)は,テイラー展開したときの収束半径 \infty になるということまで言えています。これはかなり強力です。

なお,コーシーの積分公式と正則関数は無限回微分可能な証明により,各テイラー展開の係数は

\frac{f^{(n)}(z_0)}{n!} = \frac{1}{2\pi i} \int_{C_r(z_0)} \frac{f(\zeta)}{(\zeta-z_0)^{n+1}} \, d\zeta

となります。証明にこの等式も使います。

証明

z\in D_R(z_0) を任意に固定する。|z-z_0| < r < R を満たす r を取ると,z は円周 C_r(z_0) の内部の点なので,コーシーの積分公式より,

f(z) = \frac{1}{2\pi i} \int_{C_r(z_0)} \frac{f(\zeta)}{\zeta-z} \, d\zeta
C_r(z_0), D_R(z_0)のイメージ図

が成り立つ。ここで,

\begin{aligned} \frac{1}{\zeta-z} &= \frac{1}{(\zeta-z_0) - (z-z_0)} \\ &= \frac{1}{\zeta-z_0} \cdot \frac{1}{1 - \frac{z-z_0}{\zeta-z_0}} \end{aligned}

であり,\zeta \in C_r(z_0),\, z\in D_r(z_0) より,\bigl| \frac{z-z_0}{\zeta-z_0} \bigr|<1 である。したがって,無限等比級数の和の公式より,

\color{red}\begin{aligned} \frac{1}{\zeta-z_0} \cdot \frac{1}{1 - \frac{z-z_0}{\zeta-z_0}}&=\frac{1}{\zeta-z_0} \sum_{n=0}^\infty \left( \frac{z-z_0}{\zeta-z_0} \right)^n \\&= \sum_{n=0}^\infty \frac{(z-z_0)^n}{(\zeta-z_0)^{n+1}} \end{aligned}

であり,この収束は \zeta \in C_r(z_0) に関して絶対一様である。この一様収束性と, f C_r(z_0)有界であることより,積分と無限和の順序を交換することができて

\begin{aligned} &f(z)\\ &= \frac{1}{2\pi i} \int_{C_r(z_0)} \frac{f(\zeta)}{\zeta-z} \, d\zeta \\&= \frac{1}{2\pi i} \int_{C_r(z_0)} \left( \sum_{n=0}^\infty \frac{(z-z_0)^n}{(\zeta-z_0)^{n+1}} \right) f(\zeta) \, d\zeta \\ &= \sum_{n=0}^\infty \left( \frac{1}{2\pi i} \int_{C_r(z_0)} \frac{f(\zeta)}{(\zeta-z_0)^{n+1}} \, d\zeta \right) (z-z_0)^n \end{aligned}

ここで,コーシーの積分公式と正則関数は無限回微分可能な証明により,

f^{(n)}(z_0) = \frac{n!}{2\pi i} \int_{C_r(z_0)} \frac{f(\zeta)}{(\zeta-z_0)^{n+1}} \, d\zeta

であったから,

f(z) = \sum_{n=0}^\infty \frac{f^{(n)}(z_0)}{n!} (z-z_0)^n

となる。ここで z を動かそう。十分小さい \varepsilon>0 を取ると,赤字の級数の収束は z\in \overline{D_{r-\varepsilon}(z_0)} に関しても絶対一様である。よって,真上の右辺の収束は z\in \overline{D_{r-\varepsilon} (z_0)} に関して絶対一様である。よって示せた。

証明終

コーシーの積分公式とその拡張として, n 階微分を積分で表す公式,そして無限級数の和の公式 \sum_{n=0}^\infty r^n = 1/(1-r)\; (|r|<1) がポイントでした。

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