モレラの定理とは,任意の周回積分の値が0ならばその複素関数は正則であるという複素関数論における定理です。モレラの定理は,関数が正則であることを微分ではなく積分で示せるという点で強力です。
モレラの定理の証明と,その応用例を紹介しましょう。
モレラの定理とその証明
モレラの定理は,コーシーの積分定理の逆と言われることがあります。コーシーの積分定理はざっくりいうと「正則なら周回積分が 0」という定理ですが,モレラの定理は「周回積分が 0 なら正則」という定理です。
以下で,軸平行な閉長方形領域とは,辺が実軸・虚軸と平行な長方形で囲まれた領域のことです。
モレラの定理 (Morera’s theorem)
D\subset \mathbb{C} を開集合とし, f\colon D\to\mathbb{C} を連続とする。さらに, f は以下のいずれかをみたすとする。
- 任意の区分的 C^1 級閉曲線 C\subset D に対して, \oint_C f(z)\, dz=0
- 任意の閉三角形領域 \Delta\subset D に対し,その周を \partial \Delta とおくと, \oint_{\partial \Delta} f(z)\, dz=0
- 任意の軸平行な閉長方形領域 \square\subset D に対し,その周を \partial \square とおくと, \oint_{\partial \square} f(z)\, dz=0
このとき, f は D 上正則である。
正則とは微分可能という性質にもかかわらず,仮定は積分の話をしています。微分と積分は全く逆の概念と思うかもしれませんが,複素関数ではそうではありません。
キーとなるのは,複素関数の,正則なら無限回微分可能という性質です。微分可能を示すのに,原始関数の存在を示します。その原始関数は2回微分可能なので,元の関数が正則だと言えたことになるわけです。
証明
1. \implies 2.は明らかであり,また下の図より 2.\implies 3.も明らかなので,3.\implies f は正則を示す。

正則(微分可能)性は局所的性質なので, z\in D に対し, z 中心の D に含まれる開円板 D_z を取って,その上で原始関数の存在を示したい。ただ,これについてはコーシーの積分定理とその証明を一気に紹介~三角形分割を用いて~の補題3そのものである。
よって, f は D_z 上原始関数( F'=f となる正則関数 F)が存在し,正則関数は無限回微分可能なので, F''=f' が存在する。これは, f が D_z 上正則であることを示している。 z\in D は任意であるから,結論を得る。
証明終
なお,コーシーの積分定理から,逆に正則なら仮定2.と3.は成立しますが,1.は D に単連結性を課さないと成立しません。たとえば, f(z)=1/z は D=\mathbb{C}\setminus \{0\} 上正則なので,仮定2.と3.は成立しますが, 0 の周りを周回する曲線を考えると,1.は成立しません。
モレラの定理は,正則性を判定するのに非常に有用です。一つだけ応用例を紹介しましょう。
モレラの定理の応用例
定理(正則関数族の積分も正則)
D\subset \mathbb{C} を開集合とし,連続関数 g\colon [0,1]\times D \to \mathbb{C} は,任意の t\in [0,1] に対し, g(t,\cdot)\colon D\to \mathbb{C} が正則とする。このとき,
f(z) = \int_0^1 g(t, z) \,\, dtは D 上正則である。
証明
\Delta\subset D を閉三角形領域とし,その周 \partial \Delta 上の積分について,コーシーの積分定理より, \oint_{\partial \Delta} g(t, z)\, dz =0\, \,(0\le t\le 1) である。
g は連続なので,特に [0,1]\times \Delta 上有界で,フビニの定理による積分の順序入れ替えにより,
\begin{aligned}\oint_{\partial \Delta} f(z)\, dz &= \oint_{\partial \Delta} \int_0^1 g(t, z) \, dtdz \\ &= \int_0^1\oint_{\partial \Delta} g(t, z) \, dzdt \\& =0 \end{aligned}となる。モレラの定理より, f は正則である。
証明終
正則であることが簡単に確認できましたね。
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