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【級数の収束】比較判定法は最も基本的かつ有用なものである

微分積分学(大学)
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級数 \sum_{n=1}^\infty a_n の収束・発散の議論にあたって,比較判定法は最も基本的かつ有用なものです。これについて紹介します。

級数の収束の比較判定法

定理(比較判定法; comparison test, 優級数定理; dominated series theorem

数列 \{a_n\}, \{b_n\} に対し, |a_n| \le |b_n| かつ \sum_{n=1}^\infty |b_n| < \infty ならば,

\sum_{n=1}^\infty |a_n| < \infty


も成立する。すなわち, \sum_{n=1}^\infty a_n は絶対収束する。

級数の収束判定法は他にもさまざまなものが知られていますが,それらが確かに使えることの証明は,基本的にこの比較判定法を無意識的に用いて行われます。
その他の場面でも無意識的に使われることが多いですね。

ここでいう「無意識」とは,証明が簡単なのでわざわざ「比較判定法より」と言わないという意味です。

比較判定法の証明と補足

比較判定法の証明

証明は簡単と思うかもしれませんが,きちんと確認しておきましょう。

証明

|a_n| \le |b_n| より,

\sum_{k=1}^n |a_k| \le \sum_{k=1}^n |b_k|


である。両辺 n\to\infty として,

\sum_{k=1}^\infty |a_k| \le \sum_{k=1}^\infty |b_k|


が成立し,とくに \sum_{k=1}^\infty |a_k| < \infty である。

証明終

比較判定法の補足

補足ですが,絶対収束すなわち \sum_{n=1}^\infty |a_n| < \infty であれば,元の級数 \sum_{n=1}^\infty a_n も有限値に収束することが有名です。これについては以下を参照してください。

比較判定法の具体例

いくつか具体例を挙げて,その有用性を確認しましょう。

例1.

\displaystyle \textcolor{red}{\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{2^n n} } は絶対収束する。

実際, \displaystyle \frac{1}{2^n n} \le \frac{1}{2^n } かつ \displaystyle \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{2^n} = 1 < \infty より,比較判定法から絶対収束します。

例2.

\displaystyle \textcolor{red}{\sum_{n=1}^\infty \frac{\sin n\pi/6}{2^n} } は絶対収束する。

実際, \displaystyle \left| \frac{\sin n\pi/6}{2^n} \right| \le \frac{1}{2^n } かつ \displaystyle \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{2^n} = 1 < \infty より,比較判定法から絶対収束します。

例3.

\displaystyle \textcolor{red}{\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^2} } は絶対収束する。

実際, \displaystyle \frac{1}{n^2} \le \begin{cases} \frac{1}{n(n-1) } = \frac{1}{n-1} - \frac{1}{n} & n \ge 2, \\ 1 & n =1 \end{cases} かつ \displaystyle \sum_{n=2}^\infty \left(\frac{1}{n-1} - \frac{1}{n} \right) = \lim_{n\to\infty} \left(1 - \frac{1}{n}\right) = 1 < \infty より,比較判定法から絶対収束します。

なお, \sum_{n=1}^\infty 1/n^\alpha \,\, (\alpha > 0) の収束・発散については積分による収束判定法も有名です。これについては,以下を参照してください。

例4.

\displaystyle \textcolor{red}{\sum_{n=1}^\infty \left(1 - \cos \frac{1}{n}\right) } は絶対収束する。

実際, \displaystyle 1 - \cos \frac{1}{n} \le \frac{1}{n^2 } かつ \displaystyle \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^2} < \infty (例3.)より,比較判定法から絶対収束します。

ワイエルシュトラスのM判定法

関数項級数の一様収束の議論の際に使われる,ワイエルシュトラスのM判定法と呼ばれるものも,比較判定法の一つです。主張だけ述べましょう。

定理(ワイエルシュトラスのM判定法; Weierstrass M-test, 優級数定理; dominated series theorem)

区間 I 上の関数列 \{f_n\} に対し,ある数列 \{M_n\} が存在して, |f_n(x)| \le M_n \,\,(x \in I) かつ \sum_{n=1}^\infty M_n < \infty ならば,

\sum_{n=1}^\infty f_n(x)


I 上絶対一様収束(絶対収束かつ一様収束)する

これについては,以下で解説しているので,参照してください。

その他の収束判定法