最大値の定理・最小値の定理 (extreme value theorem) といわれる,連続関数における基本的な定理を紹介します。まず定理の主張を述べ,注意点を列挙してから,証明します。
最大値・最小値の定理の主張
定理(最大値・最小値の定理)
I \subset \mathbb{R} を(有界)閉区間とし, f\colon I \to \mathbb{R} を連続関数とする。
このとき, f は I 上で最大値と最小値をもつ。
ここで,「有界閉区間」とは, -\infty < a < b < \infty があって, I = [a, b] と表される区間のことを指します。
単に「閉区間」ということもありますが,位相空間論(という分野)における閉集合の定義では,\mathbb{R} 上 \mathbb{R} = (-\infty, \infty) は閉区間とも言えますので,「有界」という言葉を付けています。(有界性に関しては,有界とは何か~有界数列(点列)・有界関数・有界集合(区間)~も確認してください。)
ここでのポイントは以下の3つです。その「ポイント」が成り立たないときの反例も含めて,確認していきましょう。
「有界閉区間」上の「連続」関数であることが重要なことが分かったと思います。
最大値の定理の証明
「有界閉区間」,「連続」がどこで使われているか確認しながら読み進めていきましょう。
証明
最大値が存在することのみを証明すれば, -f を考えることで最小値の存在にも適用できるため,最大値のみ考える。
M = \sup_{x\in I} f(x) \in (-\infty, \infty] とおく(supは上限)。このとき,ある点列 \{a_n\} \subset I が存在して, f(a_n) \to M \,\, (n\to\infty) となる。
一方で, I は有界であったから,ボルツァノ-ワイエルシュトラス (Bolzano-Weierstrass) の定理により, \{a_n\} は収束部分列 \{a_{n_k}\} をもつ。特に, I は閉なので, a_{n_k} \to a \in I \,\, (n\to \infty) である。
f は連続であるため,上記のことから, f(a_{n_k}) \to f(a) となる。よって, f(a) = M であり,特に M < \infty でもあり, f は x = a \in I で最大値を持つ。
証明終
ボルツァノ-ワイエルシュトラスの定理が鍵になりました。
多次元の場合の最大値の定理
\mathbb{R}^n 上の関数についても,まったく同様の証明で以下が成立します。
定理(最大値・最小値の定理;多次元版)
D \subset \mathbb{R}^n を有界閉領域とし, f\colon D \to \mathbb{R} を連続関数とする。
このとき, f は D 上で最大値と最小値をもつ。
最大値・最小値の定理に関する補足
連続関数 f は, a\le x \le b 上最大値をもつことが分かったので, \max_{a\le x\le b} f(x) が意味を持ち,
\textcolor{red}{ \max_{a\le x\le b} f(x) = \sup_{a\le x\le b} f(x)}
が成立します。教科書などで,右辺でなく左辺のように書かれたときは,この定理を使っており,読み手に「最大値の定理くらい知ってるよね」と暗に主張しているのです。
こういったことはよくありますから,この定理は忘れないようにしましょう。