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極限の性質6つの証明(一意性,和,積,商,大小関係)

微分積分学(大学)
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極限の厳密な定義である \varepsilon\text{-}N 論法や \varepsilon\text{-}\delta 論法を踏まえて,極限の基本的な性質の証明を紹介します。

\varepsilon\text{-}N 論法や \varepsilon\text{-}\delta 論法の演習問題としても最適なので,確認していきましょう。

数列の極限の基本的な性質

主張一覧

定理(数列の極限の性質)

以下, \{a_n\}, \{b_n\}, を数列とし,\displaystyle \alpha, \beta \in \mathbb{R}, \,\, \alpha=\lim_{n\to\infty} a_n, \, \beta=\lim_{n\to\infty} b_n とする。このとき,

  1. a_n = b_n \,\, (n\ge 1) ならば, \displaystyle \alpha = \beta である(極限の一意性)
  2. \displaystyle \alpha + \beta = \lim_{n\to\infty} (a_n+b_n) . (和)
  3. \displaystyle \alpha\beta = \lim_{n\to\infty} a_nb_n . (積)
  4. \alpha \ne 0 ならば,\displaystyle \frac{\beta}{\alpha} = \lim_{n\to\infty} \frac{b_n}{a_n} . (商)
  5. a_n > 0 \,\,(n\ge 1) かつ \alpha = 0 ならば, \displaystyle \lim_{n\to\infty}\frac{1}{ a_n} = \infty . (商2)
  6. a_n \le b_n \,\,(n\ge 1) ならば, \alpha \le \beta . (大小関係の保存)

早速証明しましょう。

証明

証明する前に一つ注意ですが,以下の3つはどれを示しても, \lim_{n\to\infty} a_n = \alpha を示したことになります。

a_n \to \alpha の同値な命題
  1. 任意の \varepsilon > 0 に対し,ある N \ge 1 が存在して, n \ge N \implies | a_n - \alpha| < \varepsilon.
  2. 任意の \varepsilon > 0 に対し,ある N \ge 1 が存在して, n \ge N \implies | a_n - \alpha| < \textcolor{red}{\boldsymbol{k}} \varepsilon. ただし, k > 0 N,\varepsilon に依存しない定数。
  3. 任意の 0<\varepsilon \textcolor{red}{\boldsymbol{< l}} に対し,ある N \ge 1 が存在して, n \ge N \implies | a_n - \alpha| < \varepsilon. ただし, l > 0 N,\varepsilon に依存しない定数。

これが同値であることの説明については,イプシロンエヌ論法をわかりやすく丁寧に~数列の極限の定義~をみてください。

教科書に見かける証明の多くは,仮定に2.を使い,結論に1.(そして随時3.)が使われることが多いですが,「どうやってその定数思いついた?」なんてことがあるため,今回は逆で,仮定に1.をつかい,結論に2.を使う(そして随時3.を融合する)ことにします。

証明

\varepsilon > 0 を任意に取る。
すると,ある N_1, N_2 \ge 1 が存在して,

\begin{gathered} n \ge N_1 \implies |a_n - \alpha | < \varepsilon, \\ n \ge N_2 \implies |b_n - \beta| < \varepsilon \end{gathered}


となる。さらに, N = \max\{N_1, N_2\} とする。これらを用いて順番に証明していこう。

1. a_n = b_n \,\, (n\ge 1) ならば, \displaystyle \alpha = \beta である(極限の一意性)

a_n = b_n \,\, (n\ge N) と三角不等式により,

\begin{aligned}|\alpha - \beta| &\le |\alpha- a_N| + |a_N - \beta| \\ &< \varepsilon+\varepsilon = 2\varepsilon \end{aligned}


より,任意の \varepsilon > 0 に対し, |\alpha-\beta|< 2\varepsilon となるため, \alpha = \beta である。

2. \displaystyle \alpha + \beta = \lim_{n\to\infty} (a_n+b_n) . (和)

三角不等式により, n \ge N のとき,

\begin{aligned} |(a_n + b_n) - (\alpha + \beta)| &\le |a_n - \alpha| + |b_n-\beta| \\ &< \varepsilon + \varepsilon = 2\varepsilon \end{aligned}


より従う。

3. \displaystyle \alpha\beta = \lim_{n\to\infty} a_nb_n . (積)

0 < \varepsilon < 1 としておく。 n \ge N のとき,三角不等式より

\begin{aligned}|a_nb_n-\alpha\beta| &= |a_n(b_n-\beta) + \beta(a_n-\alpha) |\\ &\le |a_n||b_n-\beta| + |\beta||a_n-\alpha| \\ &< (|\alpha| + \varepsilon)\varepsilon + |\beta|\varepsilon \\ &< (|\alpha|+|\beta|+1)\varepsilon \end{aligned}


より従う。

4. \alpha \ne 0 ならば,\displaystyle \frac{\beta}{\alpha} = \lim_{n\to\infty} \frac{b_n}{a_n} . (商)

1/\alpha = \lim_{n\to\infty} 1/a_n を示せば,これと3.を使うことで結論が従うため,これを示す。

0<\varepsilon < |\alpha |/2 とすることで, |a_n - \alpha | < \varepsilon < |\alpha|/2. 特に, |a_n| > |\alpha|/2 > 0 が成り立つとしておく。すると

\begin{aligned} \left|\frac{1}{a_n} - \frac{1}{\alpha} \right| &= \frac{|\alpha-a_n|}{|a_n||\alpha|} \\ &< \frac{\varepsilon}{|\alpha|^2/2} = \frac{2}{|\alpha|^2} \varepsilon \end{aligned}


より示せた。

5. a_n > 0 \,\,(n\ge 1) かつ \alpha = 0 ならば, \displaystyle \lim_{n\to\infty}\frac{1}{ a_n} = \infty . (商2)

条件より, n \ge N \implies 0< a_n < \varepsilon であるため,

n \ge N \implies \frac{1}{a_n} > \frac{1}{\varepsilon }


である。これより結論が直ちに従う。

6. a_n \le b_n \,\,(n\ge 1) ならば, \alpha \le \beta . (大小関係の保存)

b_n - a_n \ge 0 より, n \ge N のとき,

\begin{aligned} \beta - \alpha &= (\beta - b_n) - (\alpha - a_n) + (b_n - a_n) \\ &\ge (\beta - b_n) - (\alpha - a_n) \\ &> -\varepsilon - \varepsilon = -2\varepsilon \end{aligned}


であり,任意の \varepsilon > 0 に対して, \beta-\alpha > -2\varepsilon が成立するから, \beta-\alpha \ge 0 である。

証明終

大小関係の保存に関する注意点

a_n \le b_n \,\, (n\ge 1) \implies \alpha \le \beta は正しいですが, a_n < b_n \,\, (n\ge 1) \implies \alpha < \beta は誤りです。

実際, a_n = 1/n とすると, a_n > 0 ですが,極限は \alpha =0 になるため, \alpha > 0 とはなりません。注意しましょう。

関数の極限の基本的な性質

関数に関しても,同じような性質が成立します。

定理(関数の極限の性質)

以下, f,g\colon \mathbb{R}\to\mathbb{R},\,\, -\infty \le a \le \infty とし,\displaystyle \alpha, \beta \in \mathbb{R}, \,\, \alpha=\lim_{x\to a} f(x), \, \beta=\lim_{x\to a} g(x) とする。このとき,

  1. f = g ならば, \displaystyle \alpha = \beta である(極限の一意性)
  2. \displaystyle \alpha + \beta = \lim_{x\to a} (f(x)+g(x)) . (和)
  3. \displaystyle \alpha\beta = \lim_{x\to a} f(x)g(x) . (積)
  4. \alpha \ne 0 ならば,\displaystyle \frac{\beta}{\alpha} = \lim_{x\to a} \frac{g(x)}{f(x)} . (商)
  5. f(x)> 0 \,\,(x\ne a) かつ \alpha = 0 ならば, \displaystyle \lim_{x\to a}\frac{1}{f(x)} = \infty . (商2)
  6. f \le g \,\, (x\ne a) ならば, \alpha \le \beta . (大小関係の保存)

証明はほぼ同様(概ね n \ge N 0<|x-a| < \delta に変わるだけ)なので,省略します。

その他の極限の性質

今回証明した以外にも,以下のような性質があります。

定理(数列の極限の性質2)

  1. \{a_n\} 有界,すなわち |a_n| < K \,\, (n\ge 1) となる K > 0 が存在する(有界性)
  2. a_n \le c_n \le b_n \,\,(n\ge 1) かつ \displaystyle \alpha = \lim_{n\to\infty} a_n =\lim_{n\to\infty} b_n とすると, \displaystyle \lim_{n\to\infty} c_n = \alpha. (はさみうちの原理)
  3. a_n \le b_n \,\,(n\ge 1) かつ \displaystyle \lim_{n\to\infty} a_n = \infty とすると,\displaystyle \lim_{n\to\infty} b_n = \infty. (追い出しの原理)
  4. 上に有界な単調増加数列・下に有界な単調減少数列は収束する。(単調数列の収束)
  5. \displaystyle \alpha = \lim_{n\to\infty} a_n ならば,\displaystyle \alpha = \lim_{n\to\infty} \frac{a_1 + a_2 + \cdots +a_n}{n} . (平均値の収束)

1.から5.の証明は,それぞれ以下の記事を参照してください。

  1. 収束する数列は有界であることの証明
  2. はさみうちの原理とその厳密な証明~数列版・関数版~
  3. 追い出しの原理とその厳密な証明~数列版・関数版~
  4. 上に有界な単調増加数列は収束することの証明
  5. 【チェザロ平均】数列が収束するとき平均も同じ値に収束する証明

また,他にも以下のような記事があります。