ユニタリ行列の定義と性質10個とその証明

線形代数学

ユニタリ行列とは, UU^* =U^* U= I_n となる正方行列 U を指します。ただし, U^*随伴行列(共役転置)です。これについて,定義と性質とその証明を行いましょう。

ユニタリ行列の定義

定義(ユニタリ行列)

n正方行列 Uユニタリ行列 (unitary matrix) であるとは,

\large\color{red} UU^* =U^* U = I_n


が成り立つことをいう。ただし, U^*随伴行列(共役転置) I_n n単位行列である。

上の定義は, \color{red}U^{-1}=U^* すなわち逆行列随伴行列(共役転置)になると言っても同じことです。これを定義にしても構いません。特に,ユニタリ行列は正則行列(可逆行列)です。

実行列のときは,ユニタリ行列の定義は直交行列の定義と同じです。「直交行列の複素数版」といえるでしょう。直交行列は, AA^\top=A^\top A=I_n で定義されます。詳しくは,直交行列の定義と性質10個とその証明で解説しています。

また,定義は UU^* =I_n だけでも, U^* U=I_n だけでも構いません。 これは,片方だけから, \det U \ne 0 が従う(→下の性質1.)ため,逆行列が存在することが分かり, UU^* =I_n なら左から, A^* U=I_n なら右から U^{-1} をかけることで, U^\top =U^{-1} が得られるためです。

なお, AA^* = A^*A が成り立つとき,これを正規行列 (normal matrix) といいます。ユニタリ行列は正規行列です。

ユニタリ行列の具体例

ユニタリ行列の例を挙げましょう。実行列のときは直交行列に一致しますが,実直交行列でない例を中心に挙げます。

ユニタリ行列の具体例

  • \begin{pmatrix} \cos\theta &i\sin\theta \\ i\sin\theta & \cos\theta \end{pmatrix}\quad (\theta \in\mathbb{R})
  • \begin{pmatrix} 0 & i& 0 \\ 1 &0& 0 \\ 0&0&-1 \end{pmatrix}
  • 実直交行列
  • 単位行列

ユニタリ行列の性質10個

定理(ユニタリ行列の性質)

U,V n 次ユニタリ行列とする。このとき,

1. |\det U|= 1 (行列式)
2. UV もユニタリ行列である。
3. U^{-1} もユニタリ行列である。
4. U^* もユニタリ行列である。
5. U はユニタリ行列により対角化可能である。
6. U の各列ベクトルは \mathbb{C}^n における正規直交基底になっている。
7. U の各行ベクトルは \mathbb{C}^n における正規直交基底になっている。
8. \lVert U\boldsymbol{x} \rVert= \lVert \boldsymbol{x} \rVert \quad(\boldsymbol{x}\in \mathbb{C}^n) ただし,\boldsymbol{x} は列ベクトルとする。(等長性)
9. \langle U\boldsymbol{x},U\boldsymbol{y}\rangle = \langle \boldsymbol{x}, \boldsymbol{y}\rangle\quad(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in \mathbb{C}^n) ただし,\boldsymbol{x},\boldsymbol{y} は列ベクトルとする。(内積を保つ)
10. U の全ての固有値 \lambda \in \mathbb{C} |\lambda |=1 をみたす。

また,逆に6-9.のいずれかが成り立つとき, U はユニタリ行列である。

「ユニタリ」というのは要するに「単位的」なニュアンスですから,8-9.の成立はユニタリ行列の基本的なものと言えます。

複素ベクトルに対して,内積は \boldsymbol{x}=\begin{pmatrix} x_1\\ \vdots \\ x_n\end{pmatrix} , \boldsymbol{y} = \begin{pmatrix} y_1\\ \vdots \\ y_n \end{pmatrix} \in \mathbb{C}^n に対し,

\langle \boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\rangle = \sum_{k=1}^n x_k\overline{y}_k


と定義されます。また,

\lVert \boldsymbol{x} \rVert = \sqrt{ \langle \boldsymbol{x},\boldsymbol{x}\rangle }=\sqrt{\sum_{k=1}^n |x_k|^2}


です。これを踏まえて,1-10.を順番に証明していきましょう。

1. |det U| = 1

証明

A,B を正方行列としたとき, \det AB = \det A \det B,\; \det A^* = \overline{\det A} であることに注意する(→行列式の性質6つの証明(列,行の線形性,置換,積,転置など))。

\det I_n = \det (UU^*) = \det U \det U^* = |\det U|^2


より, |\det U| = 1 である。

証明終

2. A,Bがユニタリ行列⇒ABがユニタリ行列

証明

一般に A,B が正方行列のとき, (AB)^* = B^* A^* であることに注意する(→随伴行列(エルミート転置,共役転置)の定義と性質10個)。

\begin{aligned} UV(UV)^* &= UV (V^* U^*) =U(VV^*)U^*\\&= UU^* =I_n ,\\ (UV)^*UV&= (V^*U^*)UV = V^*(U^*U) V\\ &= V^*V = I_n \end{aligned}


であるから, UV はユニタリ行列である。

証明終

3. 逆行列も直交行列

証明

一般に (A^{-1})^*=(A^*)^{-1} に注意する(→随伴行列(エルミート転置,共役転置)の定義と性質10個)。

\begin{aligned}U^{-1} (U^{-1})^* &= U^{-1} (U^*)^{-1} =(U^* U)^{-1} = I_n, \\ (U^{-1})^* U^{-1}&= (U^*)^{-1} U^{-1} =(UU^*)^{-1}=I_n \end{aligned}


より, U^{-1} も直交行列である。

証明終

4. U^*もユニタリ行列

これは U^{**} = U ですから明らかでしょう。

5. ユニタリ行列は多角化可能

U UU^* = U^*U なので正規行列であり,正規行列は対角化可能なので,対角化可能です。正規行列が対角化可能であることは以下で解説しています。

6-7. Uの各列ベクトル・行ベクトルは正規直交基底

証明

U= (\boldsymbol{x_1},\dots, \boldsymbol{x_n}) と列ベクトルに分解する。 すると,

U^* U =\begin{pmatrix}\langle \boldsymbol{x_1},\boldsymbol{x_1}\rangle & \dots & \langle \boldsymbol{x_n},\boldsymbol{x_1}\rangle \\ \vdots & \ddots &\vdots \\ \langle \boldsymbol{x_1},\boldsymbol{x_n}\rangle &\dots & \langle \boldsymbol{x_n},\boldsymbol{x_n}\rangle \end{pmatrix}


であるから,\langle \boldsymbol{x_i},\boldsymbol{x_j}\rangle = \delta_{ij} となる(右辺はクロネッカーのデルタ)。従って, \boldsymbol{x_1},\dots, \boldsymbol{x_n} \mathbb{C}^n における正規直交基底である。

U= \begin{pmatrix} \boldsymbol{y_1}\\ \vdots \\ \boldsymbol{y_n}\end{pmatrix} と行ベクトルに分解する。すると,

UU^* = \begin{pmatrix}\langle \boldsymbol{y_1},\boldsymbol{y_1}\rangle & \dots & \langle \boldsymbol{y_1},\boldsymbol{y_n}\rangle \\ \vdots & \ddots &\vdots \\ \langle \boldsymbol{y_n},\boldsymbol{y_1}\rangle &\dots & \langle \boldsymbol{y_n},\boldsymbol{y_n}\rangle \end{pmatrix}


であるから, \langle \boldsymbol{y_i},\boldsymbol{y_j}\rangle = \delta_{ij} となる(右辺はクロネッカーのデルタ)。従って, \boldsymbol{y_1},\dots, \boldsymbol{y_n} \mathbb{C}^n における正規直交基底である。

証明終

逆の証明

U の列ベクトルが正規直交基底ならば,上より U^* U = I_n であり,ユニタリ行列になる。

U の行ベクトルが正規直交基底ならば,上より UU^* =I_n であり,ユニタリ行列になる。

証明終

8-9. ||Ux|| = ||x||, <Ux, Uy> = <x, y>

8.が \lVert U\boldsymbol{x}\rVert = \lVert \boldsymbol{x}\rVert,9.が \langle U\boldsymbol{x},U\boldsymbol{y}\rangle = \langle \boldsymbol{x}, \boldsymbol{y}\rangle です。

証明

一般に正方行列 A に対して, \langle A\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\rangle = \langle \boldsymbol{x}, A^* \boldsymbol{y}\rangle が成り立つことに注意する(→随伴行列(エルミート転置,共役転置)の定義と性質10個)。これより,

\langle U\boldsymbol{x}, U\boldsymbol{y} \rangle= \langle \boldsymbol{x}, U^* U\boldsymbol{y} \rangle = \langle \boldsymbol{x}, \boldsymbol{y} \rangle


であるから,9.が示せた。これより,

\lVert U\boldsymbol{x}\rVert =\sqrt{ \langle U\boldsymbol{x}, U\boldsymbol{x} \rangle } = \sqrt{ \langle \boldsymbol{x}, \boldsymbol{x} \rangle }= \lVert \boldsymbol{x}\rVert


となり,8.も示せた。

証明終

逆の証明

9.のとき,

\langle \boldsymbol{x}, \boldsymbol{y} \rangle =\langle U\boldsymbol{x}, U\boldsymbol{y} \rangle = \langle \boldsymbol{x}, U^* U\boldsymbol{y} \rangle


が任意の列ベクトル \boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in\mathbb{C}^n で成立するので, U^* U=I_n である。

8.のとき,polarization identity

\begin{aligned}\langle \boldsymbol{x}, \boldsymbol{y} \rangle &=\frac{1}{4} ( \lVert \boldsymbol{x}+\boldsymbol{y}\rVert^2 - \lVert \boldsymbol{x}-\boldsymbol{y}\rVert^2 \\ &+i\lVert \boldsymbol{x}-i\boldsymbol{y}\rVert^2 -i\lVert \boldsymbol{x}+i\boldsymbol{y}\rVert^2 )\end{aligned}


を考えることで,9.が成立するため,上に帰着する。

証明終

10. 固有値をλとすると,|λ| = 1

8. で \lVert U\boldsymbol{x} \rVert = \lVert \boldsymbol{x}\rVert を証明しました。これを用いて10.を証明しましょう。

証明

\lambda \in\mathbb{C}固有値 \boldsymbol{x}\in\mathbb{C}^n \setminus\{\boldsymbol{0}\} (列ベクトル)を固有ベクトルとする。すると, U\boldsymbol{x}=\lambda \boldsymbol{x} である。両辺ノルムを取ると

\lVert U\boldsymbol{x}\rVert = |\lambda| \lVert \boldsymbol{x}\rVert


である。一方で,8.より \lVert U\boldsymbol{x}\rVert = \lVert \boldsymbol{x}\rVert なので, \lVert \boldsymbol{x}\rVert = |\lambda| \lVert \boldsymbol{x}\rVert . したがって, |\lambda |=1 である。

証明終

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